Comic Nose

川原和子さんのおすすめマンガ備忘録

NTT出版のウェブ版で、もうかなりの期間連載している「此れを読まずにナニを読む」。伊藤剛さんと川原和子さんがほぼ交互に連載している。人生の大切なことはおおむね、マンガがおしえてくれた作者: 川原和子出版社/メーカー: エヌティティ出版発売日: 2009/…

ゾンビ経済学ーゾンビとしての手塚治虫、福満しげゆきのゾンビー

「ゾンビ経済学」といっても銀行が、死んでるはず(≒倒産しててあたりまえ)の企業を延命させる融資を行うことで、日本経済の生産性が低下云々というものとは異なります。以下は、本当のゾンビを経済学的に考察しようかなあ、と思ったもの。でも未完w。 ま…

『グリーンランタン/グリーンアロー』

映画『グリーンランタン』の公開が近いので、日本でもグリーンランタンものの翻訳が本書を含めて3冊ほど予定せれている。その中でも特に異色なのが本書である。僕の主観だとわりとスーパーマンと並ぶ無敵ぽいヒーロー(グリーンランタン)と、ほとんどただの…

『スコット・ピルグリム&インフィニット・サッドネス』&『スコット・ピルグリムVSジ・ユニバース』

『スコット・ピルグリムVSザ・ワールド』に続く三部作の完結編、謎の美少女と付き合うために彼女の元「カレ」7人と闘うことになった主人公の、愛と成長の物語。話のラインもストレートで、物語はとても読みやすい。男女関係も丁寧に描かれているし、また作者…

井上純一『中国嫁日記』第一巻

Go-Livewireでトークイベントの企画があると知って、そういえばこの人のブログを見て面白かったことを思い出す。この本もいろんなところで好意的なレビューも多いだろう。とても好感をもてて面白いエッセイマンガだ。そういえば、エッセイマンガを包括するレ…

パコ・ロカ『皺shiwa』

老いること、介助、思い出や愛すること、それらに関心のあるすべての人に読んでもらいたいコミック。物語は老人ホームにいれられたアルツハイマーに病む元銀行マンを中心に、彼の同室のカネに執着する老人、イスタンブール行き列車に乗っていると思い込んで…

『ユーロマンガ』第6巻

編集のフレデリック・トゥルモンドさんから頂戴しました。紹介が遅れてすみません。今日はこれから献本感謝デーが続きますw 連載ものの『赤いベレー帽の女』が完結です。なかなかいい作品でした。ヒロインのキャラクターがフックはいっているのですが、相手…

『マイティ・ソー:アズガルドの伝説』&『X-MEN ファーストクラス』

両方とも編集の方から頂戴しました。ありがとうございます。『X-MEN ファーストクラス』の方はすこし前にTwitterで感想を書きましたが面白い短編集です。両方のコミックともに映画の公開にシンクロさせたものであと思いますが、映画の方のX-MENもこのシリー…

マルク=アントワーヌ・マチュー『レボォリュ美術館の地下』

ルーヴル美術館BDプロジェクトの第二弾の翻訳です。前作はここで紹介した『氷河期』。この作品もまた幻想的な雰囲気と似非考古学的な側面がドッキングした作品です。美術館は時間の経過とともにすべて怪奇なものに変化してしまうのでしょうか? カフカの『掟…

『バットマン:マッドラブ/ハーレイ&アイビー 』

長く入手困難でプレミアがついていた同書の新装版です。あの悪名高いジョーカーを愛してしまった女、そして彼女にふりまわされるジョーカー、バットマン、そして彼女の友人? とのバットマンものの中でもすっきり気分よく読める快作です。 ところでshoproの…

バンド・デシネ合同イベント

明日開催。しかしこれだけまとめて出たわりには僕の周囲で読んでる人はあまりいない。Twitterみてもそもそもマンガの感想自体あまりみかけない。ブログでも本の広告張り込んだだけのものが大多数。やはり高いのが罪ですか? でも結構売れてるみたいだし。htt…

今敏『夢の化石』

今敏の全短編を収録したマンガ。これはとても有用な一冊だ。そもそもどこにどれだけ書いたのか基本情報が入手しがたかったのでこのような編集にはとても感謝したい。 作品は大友克洋氏の影響が濃厚である。それはそれで非常に興味があり、日本におけるメビウ…

エマニュエル・ギベール『アランの戦争』

第二次世界大戦に従軍して欧州世界にふれた若いアメリカ人の人生を描くドキュメント的マンガ。ひとりの人間の人生を本人に語らせる一方で、おそらく背景で膨大なそれを裏付ける調査を行って、念入りに視覚化している。人生とはいくつもの出会いや幸運、そし…

太田出版の落合さんから、東京都のマンガ規制条例に抗して

各位このたび、2010年12月15日に都議会本会議において「東京都青少年健全育成条例改 正」が可決・成立したことを受けて、大塚英志責任編集「新現実」臨時増刊号WEB版 を緊急制作しました。 以下のような内容です。*大塚英志 戦時下いかにまんがは規制される…

アレハンドロ・ホドロフスキー&メビウス『アンカル』

歴史的な作品の完訳登場である。僕はこの作品をまず英訳で、次に原書で読んだが、やはり日本語にしてくれた方が数倍いい。ちょっと重いのが難だが(持ち運びでは英語版が一番いい)、それでも電車の中で僕はこの作品をこれで三度通読したことになる。 僕がそ…

ニコラ・ド・クレシー『天空のビバンドム』

『ユーロ・マンガ』で連載されていた「天空のビバンドム」。あまりにも雑誌の発行期間が開いていたのでよく意味がわからなくなり読むのをやめていたが、こうして一冊にして読むとそこそこ面白い。たぶん最後の方はわけがわからなくなると思うがそれはそれでい…

マンガ規制関連まとめ

今年、日本銀行問題と並行して関心を深めていったのが、東京都のマンガ規制関連。ただ僕の中では日本銀行問題の方がはるかにリアルに取り組まなければいけない優先課題だったので、何か自分から動くという時間的余裕がまったくなかった。主にネットで書いた…

奥浩哉『GANTZ/OSAKA 3』

大阪編だけを取り出し、そこに加筆、冒頭と最後に大阪メンバーの独自ストーリーを収録するという無茶な企画も完結。イタリア編、とりあえずハッピーエンド(??)でよかったと思う。 できれば還暦までには完結してほしいと真剣に思っているwGANTZ/OSAKA 3 …

クリストフ・シャブテ『ひとりぼっち』

灯台に長年ひとりで暮らす中年の男。そこに食糧を運ぶ小型船舶の船長と乗組員、だが灯台の住人と接触することはない。他に何人か登場するが事実上、孤独をまさに絵に描いたドラマである。 丁寧に描きこまれた灯台の迷路のような様子や、飼われた魚、「辞書遊…

『このマンガがすごい!』2011年

毎年この種の本のベストとかなりずれるので、それを楽しみに買うことにしている。笑。あとは自分のお気に入りの選者がなにを選んでいるかも興味がある。さてオトコ編ですが、『進撃の巨人』、正直これはあまり面白くなかったのです。まわりは絶賛の嵐なんで…

今敏『OPUS』

今敏氏の最後の長編マンガであり、しかもとりあえず未発表草稿から完結話まで合わせて収録(もっともこれが完結話とみなせるかどうかは微妙)。読んでみてマンガ作品として面白い。劇中劇ならぬマンガ中マンガという形で、現実と虚構が入り乱れていく様を描…

河合幹雄「マンガ表現の規制強化を問う」

めったに読まない、というかしばしば呆れてる雑誌筆頭『世界』。しかし今号は違うw。クルーグマンの論説の翻訳があったり、木村剛についてのルポもあり読ませる。ここでは河合幹雄氏のマンガ規制についての論説を紹介。 ご存じのように本日、都議会の総務委…

ブライアン・リー・オマリー『スコット・ピルグリムVSザ・ワールド』

カナダ発のマンガ。原作を読んだときにいま一な感じがしたが、読んでない後半も含めて分厚い一冊で日本登場。最近は海外マンガが積極的に紹介されていてその傾向だけは嬉しい。 ただこの作品はいまいちのれない。ちょっと奇妙な世界とつながった一地方都市の…

長岡義幸「性表現規制の都条例改定問題再び勃発」『創』1月号

僕の見たところもっとも首尾一貫したマンガ規制への言論を続けているのが長岡氏である。その長岡氏が、6月の都条例(非実在青少年規制)の否決以降の行政側、規制推進派、規制反対派などの動きを丁寧にフォローし、11月末までの状況をわかりやすくまとめたの…

今敏&押井守『セラフィム 2億6661万3336の翼(限定版)』

今敏と押井守、両氏の興味深いコラボの初めての単行本化です。世界が「天使病」という疫病に犯されてる近未来を舞台にした物語です。天使病の謎を解明するために、その重要なキーを体内に秘す年をとらない「少女」と同伴者たちの冒険譚なのですが、残念なが…

奥浩哉『GANTZ OSAKA』1&2

娯楽としてのマンガというのがあって、それはあんまり人にはいわない。例えば『ハチワンダイバー』だとか『土龍の唄』だとか『神のみぞ知るセカイ』などまめに読んでいるが、あまり人に面白いとも読んだらともすすめたことがない。不思議なものである。この…

パスカル・ラバテ『イビクス』

ロシア革命の嵐に見舞われる寸前のペトログラード。冴えない会計士であるネヴゾーロフは母親の墓参の途中で出会ったジプシーの女の予言ー「世界が流血と大火で崩壊するとき、戦火が街を焼き尽くす時、兄弟同士で殺し合う時、あんたは金持ちになる。数奇な運…

「アニメ定量分析」

最近は毎週『SAP!』を購入している。サンキュータツオ氏と山本幸治氏の「アニメ定量分析」をファイルに収録しておくためである。大学の図書館にはないし、また近所の図書館でも見当たらない。連載第一回は最近10年くらいのアニメの放映話数の推移をもとにし…

マーク・ミラー&ジョン・ロミータJr『キック・アス』

これは面白い。リアルにヒーローやったらどうなるか、それを本当に等身大で描き、多少のラッキーをまぜるとこの物語が誕生する。今年読んだマンガの中でもベスト3に入る傑作。続編が読みたい。キック・アス (ShoPro Books)作者: マーク・ミラー,ジョン・ロ…

長岡義幸『マンガはなぜ規制されるのか』

本書は題名通りにマンガをめぐる規制を戦後の歴史的経験から今日の論争(いわゆる「非実在青少年」問題)まで俯瞰した上で、基本的に僕なりの区分で表現すると、「モラルによって表現の自由を制限すべきと考える人たち」と「表現の自由への公的介入は基本的…