Comic Nose

ニコラ・ド・クレシー『氷河期ールーヴル美術館BDプロジェクト』

久しぶりのフランスマンガ(BD)の翻訳の登場ですね。 ニコラ・ド・クレシーの作品は『天空のビバンドム』が出ていますが、それと同時期に同じ作者の作品が翻訳されたということは、フランスのマンガの知名度の向上にも役立つでしょう。そのほかにもメビウス…

今敏追悼BOOK

『Comic リュウ』の付録の小冊子。今敏のマンガ『セラフィム 2億6661万3336の翼』からの抜粋、筒井康隆氏との対談、氷川竜介氏の評論を収録しているなかなかよくできた小冊子で資料的な価値は大きい。 いままで今敏という存在ではなく、『パプリカ』や『千年…

さらば宇宙戦艦ヤマト1978年8月5日

『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』の上映日は78年8月5日。僕はその日、川越市内の駅を始発にのって池袋の上映館に向かった。なぜ始発電車にしたのか記憶がもうないのだが、ネットのない当時では、「この映画がとてもヒットするのではないか」という予感…

「『耳をすませば』とリア充」

『季刊東北学』第25号の宮崎駿の世界への寄稿。アマゾンでも予約受付。この特集にはほかに村瀬学、切通理作、正木晃、小山昌宏、米山みゆき、入間田宣夫、安斉正人氏らが宮崎アニメ論を寄稿。 僕の論説「『耳をすませば』とリア充」は、今年の『耳をすませば…

なんだ!?この評論は!?

ふくしま政美の『聖マッスル』や『格闘士ローマの星』は僕が若いころに雑誌連載のときに読んでいたがとくにカルト的とは思わなかった。なんで裸なのかな? とも実はあまり思わなかった 笑。なので後年、なんでこのマンガがカルト的人気なのかいまいちよくわ…

キングダム・カム

おそらくオールタイムアメコミを投票すればかならず上位に入ってくるだろう名作が豪華愛蔵版で登場するとは! ある種、狂気の企画である。これは誉め言葉でいっているのだが、僕はこの狂気の企画の実現を今日一日堪能させてもらった。原書にはついていない(…

『バットマン:アーカム・アサイラム』&『ヘルボーイ:壱&弐』

小学館集英社プロダクションの海外コミックでの活躍が止まらない。アマゾンなどの古書では高額で取引されていたアーカム・アサイラムがまさかの復刊である。このマニアックなエピソードは、映画版のバットマンの深みが多くの観客を得た今現在の方がより出版に…

最近読んだマンガ

ともかく驚いたのが、プルーストの『失われた時を求めて』の全体をたぶん世界で最も早くマンガにしたイースト・プレスの「まんがで読破」の『失われた時を求めて』。これは傑作。最近読んだマンガの中で最も気に入っている。このシリーズの『ユリシーズ』と…

最近読んだマンガその4

渡辺ペコ氏の『にこたま』の続刊。『モーニング・ツー』はこの連載のためだけに購入しているので当然に速攻で買い求める。以前にもこのブログで書いたけど、基本構造がどうみても『翔んだカップル』を参照枠にしているとしか思えない。参照枠は悪い意味でい…

ブルボン小林『マンガホニャララ』

久しぶりにためになるマンガ評を読んだ。ためになるとは、主に二つの点である。ひとつは、いままでその価値(面白さ)や存在に気がつかなかったマンガを多く知ることができること、もうひとつは、従来から抱いていた自分の考えがちゃんとした表現で読めるこ…

アラン・ムーア他『スワンプシング』

バイオホラーとでもいうべきか、あるいは思弁的ファンタジーとでもいうべきか、様々なアレゴリーに満ちた特異な作品であり、欧米ではきわめて高い評価を得ている連作の第一作目である。日本では翻訳はでないだろうなあ、と思っただけに、本を頂戴して驚いて…

福満しげゆき『グラグラな社会とグラグラな僕のまんが道』

本書の題名の「グラグラな社会」は不景気が原因で寄る辺なき生活のグラグラ、「グラグラな僕」の方は何かバックボーンのない自分への自信喪失のようなグラグラである。このふたつのグラグラが交差するところに、福満しげゆき氏のマンガが存在する(のかもし…

『芸術新潮』大特集 水木しげる その美の特質

実家の近い調布の真光書店で文庫を買うと、水木しげるのゲゲゲの鬼太郎たちが描かれた特製のカバーをつけてもらえる。そんな本屋で目についた『芸術新潮』と拡充再版された足立倫行『妖怪と歩く ドキュメント・水木しげる』を購入。 特に前者はまだ独立した…

小野耕世の本を読んで2,3思ったこと

以下は以前BD研究会で話したレジュメの再録。1 なんで小野耕世の業績が気になったのか 最近、『ゼロ年代の想像力』(2008)を書いた宇野常寛と長時間の対談をする機会を得た(シノドスメールマガジン近刊)。その過程で小野耕世のマンガ、アニメに関する批…

真実一郎『サラリーマン漫画の戦後史』

日本のサラリーマン物のひとつの型の起源を源氏鶏太のサラリーマン物(『三等重役』など)に求めて、その遺伝の血(源氏の血)が、日本のサラリーマン漫画にどのように継承され、また変容していったかを、その時代背景をだぶらせながら、非常に読みやすい文…

最近読んだマンガその3

火曜日の夜にいきなり激痛で救急にいったら肋骨骨折と診断されました。痛み止めで基本が自然治癒なんですね。ようやくパソコンでいま打ってますが、まだ左肩には鈍痛が残り、長い時間話すと痛みが増しますね。パソコンも基本利き腕でタイピングしているので…

辰巳ヨシヒロ:Black Blizzard(黒い吹雪)

先日のエードリアン・トミーネについてのエントリーで、鈴木さんから紹介いただいた辰巳ヨシヒロの貸本劇画時代の名作『黒い吹雪』の英訳版を読みました。前後して日本でも復刻版が中野晴行氏による辰巳氏へのインタビューを附して再刊されていますね。 英訳…

トミーネと辰巳

トミーネ同好会(?)の鈴木さんから情報をいただきましたので、その部分を以下にご紹介。 いつのまにやら(昨年から?)、エードリアン ・トミーネ公式サイト http://www.adrian-tomine.com/ ができてたようです。"News"のところを見ると、最新の記事が"Com…

最近良かったマンガ

ようやくマンガも読む余裕が 笑。というわけで最近読んだマンガで印象に残ったものを。あまりメジャーなのは面白くても省略。ベスト3は以下の三作かな。藤原カムイ『ROOTS』高度経済成長期は本当にすざまじい変化だし、また初期状態でどんな経済環境にあっ…

ニール・ゲイマン『バットマン:ザ・ラスト・エピソード』

編集の方から頂戴しました。先のスーパーマンとともに人気シリーズの「最終話」が語られています。また後半の短編も幻想的で不可思議な味わいのバットマンものといえるでしょう。しかし最近、コンスタントにアメコミの良質な作品が訳されてきてうれしいかぎ…

アラン・ムーア&カート・スワン『スーパーマン:ザ・ラスト・エピソード』

編集の方から本を頂きました。ありがとうございます。ムーアの原作によるスーパーマンもので未訳だった代表作を加えた短編集です。これは面白いですよ。ムーアはDCのヒーロー物の短編が実にいいですね。本作もスーパーマンについて映画とかテレビで少しだけ…

『ユーロマンガ』第四号

御本頂戴しました。ありがとうございます。今回の号はちょっとエロチックとユーモア両面で迫っております。『スカイドール』は物語が進展しているのんだかなんだか相変わらずわかりませんが読めてしまいます 笑 さらに『ラパス』は物語もようやく折り返し。…

青空大地『昆虫探偵ヨシダヨシミ』第2巻

編集の方にいただきました。ありがとうございます。帯に「タラちゃんも絶賛」みたいな文句があったが、もちろんサザエさんのタラちゃんではない。しかし映画化までされるとはねえ。ビデオ待ちになっちゃうけど見るのを楽しみに。ところで二巻で打ち止めだけ…

原正人「バンド・デシネを発見する」

日仏学院でバンドデシネ(フランスのマンガ)の研究者として知られる原正人さんが全10回の講義をします。日本語で解説してくれるんで入門者からも気軽に参加できるようです。僕もいくかどうかずっと考えてます。どうも年齢のせいか毎週講義だと翌日の影響を…

ジェラルド・ウェイ『アンブレラ・アカデミー』

編集の方よりいただく。ありがとうございます。最近は都条例案関係にコミットしてしまい、なんかマンガも殺伐としておりますが、やはりマンガのいいところは楽しいことです。それ以外にないわけですが。本作品はすでに原書についてこのブログでも感想を書き…

ロマンス、コミック・コード、非実在青少年

最近、議論もしてないのになぜか変なまとめサイトでコミック関係の議論の相手にでっちあげられてしまい、でっちあげた人間がこのブログでは札付きの人物なのでまあ、性懲りもないとほっておくことにした。さて、アコログから引用http://ironjoe.blog7.fc2.co…

『理論劇画 マルクス資本論』&紙屋高雪『オタクコミュニスト超絶マンガ評論』

赤間さんが数ある資本論マンガの中でもわりと勧めているので読んでみた。マルクスが子どもたちのお馬さんになっているところが萌えのツボですか? あるいは、たぶんマルクスファンには感動的なエピソードであるはずの、マルクスのためにエンゲルスが経済援助…

今年、二カ月と数日で読んだマンガのお気にいり

新著の追い込みが重なり、ブログ更新どころの騒ぎではないのはわかっているのだが、それでも息抜きにマンガはコンスタントに読んでいます。ここ二カ月ばかりの間に読んで気に入った作品をランダムにあげてみたいと思います。 まず名作といっていい境地のもの…

『バットマン:キリングジョーク』(完全版)

御本頂戴しました。ありがとうございます。アラン・ムーアの数多くある短編の中でも最も完成度の高い名作が、作画を担当したブライアン・ボランド自身の彩色や直しを経て「完全版」となって復刊です。以前出ていた日本語版を研究室に置いてきたので細部の比…

真夜中のつぶやきシリーズ(笑:泉信行と田中秀臣w

言い訳してもしょうがないけど、リアルな生活の方で新刊の経済書の準備とか下調べに忙しくなってくるとブログはやはりなおざりにならざるをえない。もちろん後期のラストスパートや本格化してきたゼミの指導とかもかさなってるし。 ところで昨日の夜に、twit…