今敏&押井守『セラフィム 2億6661万3336の翼(限定版)』

 今敏押井守、両氏の興味深いコラボの初めての単行本化です。世界が「天使病」という疫病に犯されてる近未来を舞台にした物語です。天使病の謎を解明するために、その重要なキーを体内に秘す年をとらない「少女」と同伴者たちの冒険譚なのですが、残念ながら話が十分に展開する前に未完で終わっています。ただ今敏氏の『海帰線』という先行作品にくらべると、その描写力は格段に詳細であり、また奥行きが深いものになっています。

 限定版には今敏氏へのインタビュー、今敏論、今敏氏と関わった人たちの発言などが別冊子に収録されていて大変に興味深い内容です。今氏の作品は、マンガとアニメをどう結び付けているのか、あるいは虚構世界における現実と虚構の関係は? といった根源的な表象文化の問いを考えるときに、非常に有益な対象だと思います(もちろんそれ以前に面白い作品でもあることが重要ですが)。

セラフィム 2億6661万3336の翼(限定版)(リュウコミックス)

セラフィム 2億6661万3336の翼(限定版)(リュウコミックス)