最近は毎週『SAP!』を購入している。サンキュータツオ氏と山本幸治氏の「アニメ定量分析」をファイルに収録しておくためである。大学の図書館にはないし、また近所の図書館でも見当たらない。連載第一回は最近10年くらいのアニメの放映話数の推移をもとにしたアニメ産業の動向が展望されていた。ここで両氏の話には出なかったが、やはり世界同時経済危機による広告支出の急減や、また97年のときにそもそも深夜アニメが興隆したきっかけでもあるよりコストの低いアニメ供給チャンネルの出現(ニコニコ動画など)が、今度は深夜アニメ自体も苦境に直面させているのではないか、と思う。
第1回はそんなわけで両氏の話というよりも勝手に僕が想像を広げる素材があっただけだが、二回目以降はより深夜アニメを中心にその収益構造が明らかにされていて面白い。例えば深夜アニメはDVD販売に依存していること(8割)、そしてネット配信や劇場公開でもその収益は限界があることが話されている。
ここで山本幸治氏は「“萌え”がアニメを殺す」という命題を掲示している。それは以下のようなものだ。
山本「コアなアニメファンが求めるような“萌え”や“キャラ”に先鋭化された作品に、『トイストーリー3』を見るような一般人がついていけなくなり、断絶と縮小が加速していくことだよ」
「DVD観ないと理解できないようなテレビ番組として成立しないものを放送……むしろテレビが断絶を加速している。この断絶した状況では、たとえ値段を下げても一般層は買わない。今は、単価が高くても買う、コア層の忠誠心を試す商売になっていて、先細りしかない。これが僕の言う『萌えがアニメを滅ぼす』状態ってこと」
確かにDVDと深夜アニメの事実上の「抱き合わせ販売」は消費者の側に大きな損失を発生させてしまうだろう。
第3回は“萌え”に依存しないアニメ作り、そして二万枚でペイするアニメ作りの可能性として、「海月姫」があげられていた。ここらへんの間口の広がりは本当にあるのかどうか。興味深いところではある。