クリストフ・シャブテ『ひとりぼっち』

 灯台に長年ひとりで暮らす中年の男。そこに食糧を運ぶ小型船舶の船長と乗組員、だが灯台の住人と接触することはない。他に何人か登場するが事実上、孤独をまさに絵に描いたドラマである。

 丁寧に描きこまれた灯台の迷路のような様子や、飼われた魚、「辞書遊び」の空想の日々などは、このフランス漫画(いちいちフランスの。と解説をつけるのも面倒なのだが)に一種の律動感を与えている。

 ただこれが定価に見合った作品かといえば、はなはだ作者の自己満足の作品だと断じるしかない。結末部分も含めて、類似のモチーフを描いたものは日本の漫画でもかなりある。例えば『アイアムアヒーロー』などはこの作品のテーマと同じだ。しかも娯楽性と表現においても優っていながら、短時間で仕上げる職人技までもっている。何も日本の漫画がすぐれているといいたいのではない。あまりにも「芸術」ぽい雰囲気に溺しているだけの作品に思えるのだ。

点数をつけるならば容赦ない評価はゼロ点である。

ひとりぼっち (BDコレクション)

ひとりぼっち (BDコレクション)