パコ・ロカ『皺shiwa』

 老いること、介助、思い出や愛すること、それらに関心のあるすべての人に読んでもらいたいコミック。物語は老人ホームにいれられたアルツハイマーに病む元銀行マンを中心に、彼の同室のカネに執着する老人、イスタンブール行き列車に乗っていると思い込んでいる老女、孤独な老女、電話をかけようと徘徊する老女、永遠の愛を誓いあったふたりの老夫婦、そして介護士や医師たちなど群集劇が見事に描かれ、一気に読めてしまう。ここ1、2年、すぐれた海外のコミックが紹介されているが、この本はその中でも傑出したグループの中に連なるだろう。読書の喜びを体験できる素晴らしい作品だ。同時収録の「灯台」も感銘深い佳品。

皺 (ShoPro Books)

皺 (ShoPro Books)