2014-01-01から1年間の記事一覧

浜田宏一「冷戦後の防衛構造」&「日本の平和憲法の経済的帰結」

日本国憲法第九条と日本国民にノーベル平和賞がくるかもというネタに関連して、浜田宏一先生の講演をふと思だした。浜田宏一「日本の平和憲法の経済的帰結」 http://www.asiawide.or.jp/eps/symposium/s96/1-4.htm このスピーチを補うやや理論&実証的なスピ…

2014年ノーベル経済学賞はジャン・ティロールに

今年のノーベル経済学賞は、ジャン・ティロール(Jean Tirole)が受賞。 ティロールの金融危機の経済学にはあまり感心しなかったが、彼のテキストは僕の大学院時代の定番だった。いまは知らないけど。それと米国の論者たちはフランス人であることに注目して…

姜 克実『石橋湛山』

「ナショナリズムの超克」−姜先生によればこのテーマこそ石橋湛山が最後に残したメッセージだという。戦前からの小国主義の立場、特に政界の第一線を引退してから強まった脱冷戦的な発想を引き継ぐ石橋の思想であり、今日的な意義がある、我々が立ち向かわな…

宮崎哲弥『正義の見方』の小泉今日子論

だいぶ前にTwitterで栗原裕一郎さんに教えてもらった小泉今日子論(「小泉今日子の時代」の終焉)が収録されている。同書はいまから13年前に宮崎さんと初めてお会いするための予習を兼ねて購入して読んだ。そのときはアイドルに興味がまったくなかったので軽…

児童労働はなぜ悪いのかーゴッセンからカイラシュ・サティアルティへー

ノーベル平和賞がインドのカイラシュ・サティアルティ氏に授与された。児童労働への反対運動を評価されてのことだという。このエントリーでは、児童労働がなぜ経済学的な意味で悪いのかを過去の経済学を利用して少し書いてみたい。 ヘルマン・ハインリッヒ・…

常見陽平『リクルートという幻想』

常見陽平さんから頂戴する。感謝。リクルートのCMという身近な話題から入り、同社の価値観の古さを指摘し、リクナビの問題点、リクルートの企業体質、新規事業の評価など「リ僑(元リクルート)」(w)ならではの厳しい視線が展開。正直、リクルートという…

エミリー・オスター『お医者さんは教えてくれない妊娠・出産の常識ウソ・ホント』

編集から頂戴したのだけど、初め題名をみたときに、「ん? なんでこの本を?」と思ったが、すぐにこれが経済学魂全開の面白本だとわかった。著者は米国の若手経済学者。自身の妊娠と出産(実際には子どもをつくる決心をする前から)の体験中に、さまざまに生…

戻ってきたブーメラン&「外堀を埋められた増税派」(飯田泰之in『Voice』11月号)

飯田泰之さんの「外堀を埋められた増税派」(『Voice』11月号)を読む。 第二次安倍政権の9月の内閣改造の評価で、閣内や党の要職に増税派を「取り込んだ」形になっていることを指摘し、これは増税シフトよりもむしろ増税派へのけん制としても解釈できること…

片岡剛士「“アベノミクス・マークⅡ”のすすめ」in『Voice』11月号

片岡剛士さんの消費増税の影響の検証と今後の日本経済の見通し、そして対策を提起したすぐれた論説。すでに僕とのトークイベントでも本論説の内容と同じものを話されていましたが、活字媒体で読めるのは便利です。ぜひお手にとって一読してください。消費税…

ポール・クルーグマン他『金持ちは税率70%でもいいVSみんな10%課税がいい』

クルーグマンとギリシャ元首相ジョージ・パパンドレウは「金持ちは税率70%でもいい」派。なぜなら社会的不平等に対処するお金が足りないから。また税金上げても金持ちが海外逃亡したりやる気がなくなる可能性は低いし、資産を海外に逃避させる可能性がある…

千住淳『自閉症スペクトラムとは何かーひととの「関わり」の謎に挑む』

このエントリーでも言及したちくま新書の一冊。猪木武徳先生が推薦されてるので興味があって読む。タイラー・コーエンが『フレーミング』(原題は『情報喰いの時代』等)でも話題にしていた、「自閉症の認知的側面」にも関連していると思ったからでもある。 …

エンリコ・モレッティ『年収は「住むところ」で決まる』

だいぶ前に頂戴して何度かTwitterで称賛したのでブログに書いた気になってました(笑)。今年読んだ経済書の中でも、ニーズィー&リスト『その問題、経済学で解決できます』やシーブライト『殺人ザルはいかにして経済に目覚めたか?』と並んで面白かった。世…

マッキノンと円高シンドローム

ロナルド・I.マッキノン死去。日本のリフレ派に多大なインスピレーションを与えた偉大な経済学者。まだ79歳と高齢者が多い経済学者の中ではまだまだこれからだったのに。残念です。 以下では、日本のデフレ問題とマッキノンの「円高シンドローム」の関係につ…

宇沢弘文と経済学批判(by田中秀臣in Biz Journal)

宇沢弘文の経済学批判(新古典派批判としての反経済学)について書きました。余力があればテーマを変えて、続けて別なところに書きます。経済学者・故宇沢弘文、なぜ偉大?業績を5分で学ぶ 経済成長至上主義と市場経済の弊害 http://biz-journal.jp/2014/10/…

紙屋高雪『“町内会”は義務ですか?〜コミュニティと自由の実践〜』

身近でありながら、人によって関心の度合いがとても違う組織が、「町内会」だろう。回覧板をまわしたり、町内会費を納めたり、時には地域のお祭りやバザーなどに関係するなど都会に住んでいてもわりと親しい組織だ。しかし本書はこの町内会がもっとディープ…

『90年代狂い咲きVシネマ地獄』(高鳥都共同編集人&企画)

高鳥都さんから頂戴する。ありがとうございます。 狂人映画本です!(笑)。映画そのものとその背景に展開された人間のくだらなさと愚かさと、それを表現する文章の奇天烈の三者のアンサンブルをてんこもりにお届けするVシネガイド。 この本でも登場する嶋村…

竹中平蔵&高橋洋一『日本経済のシナリオ』

日本の政策設計(本書でいう“シナリオ”)を多く手掛けてき、また同時に様々な評価にさらされてきたふたりの率直な対談だ。意外といっては変だが、それほど難しい話はせずに、特に中盤はいろいろ脇道にそれたり、まったりした雰囲気さえなぜか漂うのが面白い。…

動画配信!トークイベント「スタグフレーション、リフレ、再分配の政治経済学」(片岡剛士&田中秀臣in荻窪ベルベットサン)

本日の超高密度のトークイベントの動画配信してみました(怒涛の三時間!前半http://www.ustream.tv/recorded/53475957 後半http://www.ustream.tv/recorded/53477685 膨大な資料はプロジェクターに映しましたがどうでしょうか? 日本経済を理解する必要十分…

タイラー・コーエン『大格差』

前著『大停滞』では新たなフロンティアの消滅から長期停滞を強く主張したコーエンは、今回はその原因を機械と人間の競争に求める展開に。機械との競争は、中間層の消滅(高所得層と低所得層の二極化)、雇用の喪失に至る。他方で新しい働き方というか求めら…

飯田泰之『日本がわかる経済学』

ビジネスで活用できるマクロ経済学(日本全体をとらえる経済の見方)の入門書としてとても読みやすい。ラジオでの話をベースにしているので語り口が滑らかに構成されているのも長所。前作のミクロ編『思考をみがく経済学』よりも個人的にはこちらの方が面白…

「私が選ぶ一冊」in『ちくま新書ブックガイド』

『創刊20周年記念「私が選ぶ一冊」ちくま新書ブックガイド』を頂戴する。僕も濱野智史氏の『前田敦子はキリストを超えた』を選んだ。知り合いも多数アンケートにこたえていて楽しい冊子。買わなくては、という本を教えてもくれる。本屋さんに行ったら新書の…

山川賢一ワールド大研究ー日本アニメと悪堕ちループ(10月18日夜、山川賢一、稲葉振一郎、田中秀臣)in Naked Loft

久しぶりにNaked loftでトークイベントやるよ〜 山川賢一ワールド大研究ー日本アニメと悪堕ちループ 【出演】山川賢一(批評家)、田中秀臣(経済学者、上武大学教授)、稲葉振一郎(社会学者、明治学院大学教授) OPEN 18:30 / START 19:30 前売\2000 / 当…

ウリ・ニーズィー&ジョン・A・リスト『その問題、経済学で解決できます』

今年読んだ経済書の中でも最も面白いもののひとつ。 ニーズィーとリストはランダム化実地実験という手法で、保育園の送り迎え、女性差別、子供の成績を上げる方法、寄付金が増える方法などにそれを応用して目覚ましい成果をあげている。 経済学は一般にイン…

市場ってなんだろうか?−いじめとシートベルトー

現代は市場の時代だ.ここでの「市場」は日本語では「いちば」ではなく「しじょう」と呼ぶ.市場ではいろんなものが取引されている.食料品,衣料といった生活必需品から,車や家電製品,パソコン,さらに教育や医療,旅行まで多種多様だ.一昔前では市場が…

ご予約開始!10月2日(木曜日)「スタグフレーション、リフレ、再分配の政治経済学」出演 片岡剛士(エコノミスト)田中秀臣(経済学者)、三井さんのシャンパン、開場19時半、開演20時、荻窪ベルベットサン

話題になった動画「リフレと再分配の政治経済学」の事実上の続編をトークライブの形でお届けします。動画をまだみていない人もまたご覧になった人も、いわゆるリフレ派の再分配政策に関する考え方、その経済政策についての価値判断の在り方、そして経済思想…

政府ってダメなの、イイのどっちなの?

二年半まえに『電気と工事』に寄稿したものの草稿を以下に。 僕たちは日常的によく政治家や官僚たちの悪口や批判を口にする。でもその一方で、何か民間で不祥事が起きると、国にどうにかしてほしい、と注文もする。そんなに悪口や批判をふだんからいっている…

さんみゅ〜「初雪のシンフォニー」初披露in埼玉菖蒲

アイドル絶ちしている田中ですが、とりあえずごく少数のアイドルだけは例外です(変わらないんじゃ 笑)。 さんみゅ〜の新曲のリリースイベントで「初雪のシンフォニー」初披露ということと、山内遥(はるるん)も歌うということで出掛けに行きました。彼女…

高橋洋一『「成長戦略」の罠』

アベノミクスの三本の矢のうち、三番目の「成長戦略」について詳細に検討した高橋さんの新作です。「成長戦略」は、規制緩和(本当は規制撤廃)と民営化(本当は民有民営化)によって経済の長期的な成長率の増加に貢献すると期待されるものです。もっとも規…

アジアの社会保障リンク集(個人的なメモ)

厚生労働省「2013年 海外情勢報告」(特集 アジア7か国の労使紛争とその解決制度、東アジア・東南アジア・南アジア各地域にみる厚生労働施策の概要と最近の動向を掲載)…総論として役立つ http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kaigai/14/index.html末廣昭(編…

王亜南の政治経済学(個人的なメモ)

王亜南は中国の経済学の歴史の中では著名人。日本語で読めるものを以下に個人的なメモ書きとして集める。 経済思想史や日本との関係と同時に、中国の官僚政治についての独自の見解に注目している。王亜南『中国地主経済封建制度論綱』1〜4(奥田秋夫監訳、…