身近でありながら、人によって関心の度合いがとても違う組織が、「町内会」だろう。回覧板をまわしたり、町内会費を納めたり、時には地域のお祭りやバザーなどに関係するなど都会に住んでいてもわりと親しい組織だ。しかし本書はこの町内会がもっとディープで、また日本社会の興味ある縮図であることを示している。題名で「町内会は義務ですか?」と書かれているが、さすがに義務ではないだろう、と思い込んでいたが、まさか最高裁までもつれて義務ではないのが法的に「確定」したとは思わなかった。その意味では本書は題名だけで十分に読者の関心と驚きを誘うことに成功している。
本書はUR(都市再生機構)の賃貸団地の町内会会長をひょんなことから引き受けた著者の経験談をベースにしている。特に面白さ(著者の体験ではしんどさ?)が加速していくのは、校区(地方自治体組織と町内会との間にある中間組織的なもの)の代表たちとの軋轢の描写、従来の町内会を休会して、もっともっととてもゆるい自治会組織を立ち上げるところからだ。
この「ゆるゆるな新町内会」は出入り自由、参加の度合いも自由な、気楽な組織として描かれている。かって『不謹慎な経済学』の中で、私は人間関係が希薄になったのは人々の選択の結果だと書いたが、このような同調圧力をできるだけ軽減し、さらにお役所の出先機関的な意識に陥ることのない仕組みがあれば、本当にいいことだと思う。
しかし町内会といってもこれだけ多様性があることに率直に驚いた。参考文献も充実していて、その意味でも良心的だ。アソシアシオン論の日本の実例としても解読できそうで、興味は尽きない。ぜひ一読を勧めたい。
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“町内会"は義務ですか? ~コミュニティーと自由の実践~ (小学館新書)
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