タイラー・コーエン『大格差』

 前著『大停滞』では新たなフロンティアの消滅から長期停滞を強く主張したコーエンは、今回はその原因を機械と人間の競争に求める展開に。機械との競争は、中間層の消滅(高所得層と低所得層の二極化)、雇用の喪失に至る。他方で新しい働き方というか求めらる人材も大きく変容する。コンピューターの管理能力はもちろんだが、それ以上に本書で強調されているのは、長期にわたる安定的に働ける資質、信頼できる働き手の性格が求められるというところである。まるで日本型雇用システムの特徴の現代版を読んでいるような気になる。

 小ネタが豊富であり、特に雇用関係ではいろいろヒントをもらった。ところで若田部昌澄さんの解説の目配りが、ある意味、コーエン以上にいいのがこの本の最大の欠点といえるかもしれない 笑。

大格差:機械の知能は仕事と所得をどう変えるか

大格差:機械の知能は仕事と所得をどう変えるか