片岡剛士「“アベノミクス・マークⅡ”のすすめ」in『Voice』11月号

 片岡剛士さんの消費増税の影響の検証と今後の日本経済の見通し、そして対策を提起したすぐれた論説。すでに僕とのトークイベントでも本論説の内容と同じものを話されていましたが、活字媒体で読めるのは便利です。ぜひお手にとって一読してください。消費税増税の影響が深刻であり、それが日本経済を再び悪循環に陥らせる可能性が高いことがわかるでしょう。要点を列挙。

1 実質GDP成長率の落込みが厳しい。マイナス7.1%(前期比年率)。特に内需の落込みは、前回の消費税増税リーマンショック直後、東日本大震災のときを大きく上回るマイナス11.4%の惨状である。その主因は民間消費の落込み。もろに消費税の悪影響である。民間在庫が増えているが、それは意図せざる在庫の増加、つまりはケインズ的な図式でおなじみの総需要の急低下を表現している。外需の内容もよくない(詳細は片岡論説参照)。

2 耐久消費財の落込みの深刻さの指摘。実質所得の低下に伴い、消費低迷が長期化することを意味している。低所得者層・子育て世帯に悪影響が深刻。詳細は論説本体と同時に、こちらの動画も参照ください。

3 実質GDP成長率は0%という片岡試算。

4 予想インフレ率が低下基調。インフレ目標の達成のために政府と日本銀行が政策協定(アコード)を結び、よりデフレ脱却にコミット(追加緩和など)。また日本銀行法改正も重要(物価安定と雇用の安定明記)。

5 財政政策は消費税増税延期、各種減税が必要。いまのままだとプライマリーバランスの政府目標は確実にみたされない。トークイベントでは2015年度予算での税収の減少が示唆されていた(増税でむしろ減収! まさに97年の消費税増税以降の経験の繰り返しになる可能性大きい)。

6 「併せて安倍政権としては、社会保障制度改革に本腰を入れることが求められる。拡大する社会保障費の財源を確保するために消費増税を充てることは、消費税増税→景気悪化→景気悪化を抑制するための財政支出の拡大→社会保障費の拡大→消費税増税→景気悪化→財政支出の拡大→… という無限の悪循環を続けながら、消費税や社会保障にかかわる制度上の矛盾を深刻化させることにつながる。こうした流れを断ち切ることが必要だ」。

 「制度上の矛盾」としては、消費税増税スキームが景気悪化・制度悪化によってむしろ改善すべき低所得者層を中心にしてその経済的状況を悪化「し続ける」という点が指摘される。この点も詳細は先日のトークライブで念入りに説明しているのでぜひご参照ください。