最近読んだマンガその4

 渡辺ペコ氏の『にこたま』の続刊。『モーニング・ツー』はこの連載のためだけに購入しているので当然に速攻で買い求める。以前にもこのブログで書いたけど、基本構造がどうみても『翔んだカップル』を参照枠にしているとしか思えない。参照枠は悪い意味でいっているのではない。論文でも参考文献や先行する業績がある上で成立する。マンガも同様であり、ただしいちいちそれを明記しないのが慣例になっているにすぎない。例えば映画でも最近読んでいるのだが、四方田犬彦の『『七人の侍』と現代』で日本の映画だけではなく、マンガや世界各国で『七人の侍』が多様な形でそのような参照枠として機能していることを明らかにしている。

 話がずれたが、要するに妙に懐かしい世界観が広がっているのが、この『にこたま』の世界である。男主人公が鈍感であるが、妙に誠実ぽいふるまいをするところも偽善すれすれなところも、柳沢きみおの描く男たちにかなり似ていると思う。要するにだらしがないのだw。

にこたま(2) (モーニング KC)

にこたま(2) (モーニング KC)

 比嘉慂の初期作品集という『砂の剣』を読んだ。比嘉の作品は雑誌に掲載されたものをいくつか読んだが、まとめては小野耕世氏が論説の中で誉めていたのが気になり、『カジムヌガタイ』を読んだのが最初である*1。まだそんなに前のことではない。この『砂の剣』も『カジムヌガタイ』と同じ沖縄戦の状況を沖縄の人々、日本兵、そして今作品ではアメリカ兵側からも描くことで、多層的な沖縄戦サーガとでもいうべき多層的な世界を紡ぎだしている。ひとつひとつの作品は単調な作風なのだが、この単行本だけではなく『カジムヌガタイ』の印象とあわせるとそのように思えるのだ。

 

砂の剣(すなのつるぎ)

砂の剣(すなのつるぎ)

 衿沢世衣子さんの最新単行本『ウイちゃんがみえるもの』はオールカラーの愛すべき小品である。八百万の神々(それにしては気圧太郎以外は神道系というにしては、みんなかわいすぎる。特にリンゴウサギ!)とでもいうべきもの、あるいは人間の作り出したものに宿る妖精たちをみることができる小学生の女の子ウイちゃんの物語である。ウイちゃんがどんな成長をしていくのか、続きが読みたい作品である。

ウイちゃんがみえるもの

ウイちゃんがみえるもの

他には続きものとしては、よしながふみ『大奥』の最新刊が従来の巻に比べても面白く印象的。またBoichi『ラキア』の第三巻も先行する巻とは異なり魅力的なストーリー展開に。それと世評が高い作品が意外に僕にはだめで(例:『進撃の巨人』、『さよならもいわずに』など)、むしろ『GANTZ』の方が『進撃の巨人』と事実上同じモチーフではるかに上をいっている気がしている。

ラキア(3) (モーニング KC)

ラキア(3) (モーニング KC)

大奥 第6巻 (ジェッツコミックス)

大奥 第6巻 (ジェッツコミックス)

*1:ちょうどこのエントリーの短文を書くときに知ったhttp://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20100816#p3