高橋洋一『恐慌は日本の大チャンス』

 日本で景気対策が事実上不在になった今、高橋さんの復帰は本当に嬉しいことです。この本はネット書店で発売日が一度確定しててその後未定に表示されてましたので出ないんではないか、と思ったのですが、杞憂でした。正直いって冒頭の例の事件については個人的には関心がないのでとばしてさっそく本文へ。

1 日本のGDPギャップは80兆円規模。それを政府紙幣25兆円、金融緩和25兆円、埋蔵金25兆円で対応するというもの。

2 麻生政権時の「官僚専制体制の復活」。景気対策にすべて「基金」が附属していて、それは官僚のピンはねと景気効果の減少を意味する。国民の減税や給付金で使い道の自由な選択をまかせるのがいいのに、日本ではなぜか官僚が使い道を決める手法が採用されてしまう(ここ重要。なぜか減税や給付金がばらまきで効果がないと批判する連中にかぎって、政府や官僚が決める「産業政策」みたいなものが効果がある、という欺瞞が僕の観察でもある)。例:エコポイント制も官僚の天下り先と連動。

3 ETC機器にからむ官僚利権、郵政民営化の見直しへの批判、財務省の植民地のまんまの日本政策投資銀行の「改革」骨抜き+日銀との「共闘」

 この最後の部分はCP購入に関して、日本政策投資銀行を通すとこの銀行が手持ちの債券放出それでCP購入をファイナンス。これでは市中へのマネーの増加がないに等しくなる。日銀の責任回避と日本政策投資銀行に役目を課したい財務省との思惑の一致と高橋さんは指摘している。この協調のあるないは別にして景気効果がなく、また日本政策投資銀行がこれをやる意味がないのは同意。

4 民主党政策評価。是々非々対応。総論的だと民主党の政策はマクロ経済政策ではなく、個々のミクロ的な政策だと、いうのが高橋さんの評価だろう。その延長で序章では、子育て手当が所得の再分配機能を果たすことを指摘している。また農業者への個別保証も農協通すよりも好ましいと、言葉は使わないが「カルドア的補償」であると評価している。その一方で高速道路無料化とガソリン値段引き下げという政策には完全否定するものの、ピークロードプライシング環境税の導入という方向性も民主党は否定すべきではないと提示している感じである。

 上の1〜4は序章部分であり、たぶんこれが民主党政権に交代してから書かれたような感じだ。本文の方が個人的に政府紙幣発行をくだらない理由で批判する人たちへの反論になっていて面白そうである。

恐慌は日本の大チャンス  官僚が隠す75兆円を国民の手に

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