李登輝の日本再建の「八策」における経済政策

 『Voice』10月号で驚いたのがこの李登輝氏の八策中の経済政策に関する八番目の策。全文引用。

「さらに経済政策について申し上げます。日本の金融政策を担う日本銀行は、1990年代に大きく間違ったマネジメントを行い、日本経済に「失われた10年」の大不況をもたらしました。その後、日本経済は回復しましたが、その経済成長はあくまで輸出に頼ったものでした。よって国内の需要不足という根本問題が残ったままで、昨年秋のリーマン・ショックを機に再び大不況に陥ったのです。この状況を打破すべく、日銀は継続的に実質マイナス金利政策をとる必要があります。そのためには、確かなインフレターゲットを設定することが求められるのです。つまり、金融緩和政策を積極的に打ち出さねばならないといえましょう。金融政策については、民主党に構想力がない、と日本のエコノミストは批判しいるようです。であるならば、上述したような政策を熟知している民間のエコノミストを政策ブレーンとして取り込み、積極的な金融政策を打ち出すようにすればよいのです。同時に大規模な財政出動によって経済を強化することも肝要です。減税は景気対策にとって大きな効果をもたらすものとはいえませんから。また日本は莫大な個人金融資産を抱える国です。この金融資産が投資基金として市場にきちんと流れる道筋をつくることも重要です。そして日本国内に対してだけではなく海外に対して投資を進めていくことも考えねばなりません。それが実現すれば、日本の世界経済に対する大きな貢献につながるでしょう」(45-6頁)

 地域経済の財源・権限委譲や、官僚政治の変革など他にも経済政策関連があるが、集中して述べられたこの八番目の「策」をみるに、日本にこのように満点の「策」をもった政治家がどれだけいるか、僕は鳩山政権発足とその後をみていきたい。

 ちなみに李氏が指摘しているように、民主党のブレーン(国家戦略局有識者メンバーなど)として誰を採用するのか。例えば伊藤隆敏氏は日銀人事の件をみても民主党には受け入れる余地はないだろう。高橋洋一氏もいまはいない。飯田さんは残念だか若すぎる。岩田先生は海外赴任中。いないいないづくしでは、あまりにも情けないのだが、率直にいって試してみる価値のある人材は、僕の見るところふたりいて、ひとりは首都西北部、もうひとりは(ゴホン)かなり気難しいがさらにそこよりずっと西北部にいると思う。「ブレーン」も経験させなきゃただの飾りである。李氏が提起した案を起用してみる価値は大いにあるだろう。

 ちなみにこの日本語の要約報道(http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/china/298522/)だが、露骨に八番目の中心メッセージを削除するといういつもの日本のメディアの海外報道の姿勢が伝わってきて香ばしい。「金銀物貨宜しく外国と平均の法を設くべき事」の「外国との平均の法」とは、インフレターゲットを含む財政金融政策と 長期的な課題としての資金の歪みを正す改革(公的金融機関改革など)を指すのは明白であり、記事では上をみてもわかるようにあえて分量が少ない方を採用している。こういう日本の記者独特のバイアスはなんとかならないのだろうか? 自分の無知を読者におしつけるような記事を書くのを恥と思った方がいい。