文科省通知での「人文系学部廃止」についてのメモ

この6月8日の文科省通知の官僚文学をめぐって、政府が「人文系学部」を廃止にかかっているという超訳が国際社会にまで出回っている。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/002/siryo/attach/1360412.htm

簡単にいうと不出来な官僚文学による「デマ」の拡散に等しいのだが、最近はこの超訳がだんだんとひどくなってきて、「一億総反知性主義化」みたいなことを政府は狙っているだの、反安倍政権ネタに使われているのが現状である。

ただこの官僚文学を素読みすれば、少子高齢化で構造的に需要がなくなる学部学科の統廃合の必要性を書いただけで、問題提起としてはあっても政府の「命令」でも、また積極的な廃止政策が採用されているわけでもない。むしろバトンは大学側に投げ渡されているように思える。それをどう受け止めるか、また投げ出されても困るという議論もあるだろう。いわば毎回見慣れた構造問題に対するさまざまな反応があるだろう。ただ実際に20数学部がこの通知で統廃合をすることになったなどというデマも見るにつけて少々呆れているのは実状である。ここにも反安倍主義の根強いバイアスがあるように思えてならない。

さて以下の石原千秋氏はそのようなバイアスとは無縁に、この通知のもつ問題性を構造改革的な視点で議論していて参考になる。

国立大学改革の一環として通知された「文系学部廃止」は是か非か
http://www.sankei.com/premium/news/150823/prm1508230025-n1.html

また最新のニュース報道として以下も参照
文系廃止通知:「誤解です」文科省が火消しに躍起
http://mainichi.jp/select/news/20150927k0000m040059000c.html

 この種の官僚文学の作文読解が世の中にデマを広めている背景には、やはり日本の文科行政がいままで「クローズドレジーム」で行われてきた弊害だといっていいだろう。文科省を廃止するのもまあ一案だが、ここでもレジームの転換が求められていると思う。「クローズドレジーム」の説明は若田部昌澄『ネオアベノミクスの論点』(PHP新書)に詳細は譲る。簡単な見取り図は以下の記事を参照。

http://shuchi.php.co.jp/article/1496?p=1

実際に現場にいると大学行政は文科省の通知の解釈に振り回されることが多く、その意味ではクローズドレジーム病が骨髄までしみこんでしまっている。「人文系学部廃止」という「デマ」の背景には、そんな政策病理があるということは確か。