所得税から消費税への問題点(消費税シフト、直間比率見直し、所得税のフラット化などと経済格差の悪化)

 所得税のフラット化とそれと連動した消費税増税シフトは、どこがまずいのだろうか? この方針は財務省がずっと譲らないもの。消費税増税というと、景気への悪影響ばかりに注目されるが、この財務省方針自体は、景気への悪影響だけが論点ではない。以下では一般的に、「所得税から消費税へのシフト」の問題性を、八田達夫先生の『ミクロ経済学Ⅱ』(東洋経済新報社)を利用して解説したい。経済格差を縮小させる政策のひとつに累進的所得税(所得があがるにつれて平均税率をあげる)がある。

 だが、87年以降、この累進度が劇的に低下。例:最高税率が88%が現在は50%(最新のデータはこれでいいのかあとで確認する)。八田さんは日本の経済格差拡大にはこの累進度低下が主因と批判する。ちなみにこの累進度低下の背景には、「所得税から消費税シフト」が存在する。八田先生の整理では、消費税シフト論者のあげる正当化理由は次。1)次世代のため(=高齢化の中で勤労世代の負担軽減)、2)クロヨン対策(益税対策)、3)累進度あげると高所得者働かない等。

 八田先生は『ミクロ経済学Ⅱ』中でこれらの消費税シフトの根拠について批判を展開しています。例えば消費税増えてもそれを社会保障の充実につかえばいい、という理屈があります。八田先生は1)累進度を低めると所得格差拡大し、生活保護の拡充と矛盾、2)そもそも格差拡大を防ぐ財源に利用されてない。また老人格差の拡大がこれから予想されます。それに対して消費税シフト(=所得税のフラット化)はその事態を拡大します。また勤労世代の人たちの経済的格差ももちろん拡大します。他にも論点がありますが、こんなところでまずはいいでしょう。

 ちなみに八田先生の本にもあるように累進度を低下させると景気安定化効果を削減されてしまう。これは他面で財政状況の悪化につながる可能性がある。実際に飯田泰之雨宮処凛『脱貧困の経済学』では、90年代から今日までの財政悪化の主因として累進度低下が指摘されている。消費税シフト(直間比率の是正、所得税のフラット化等)を主張する一方で、景気の安定化や財政状況の改善などを主張すると深刻な矛盾になる。私見では、財務省は部分的な政策を強く推し進めるが、全体の整合性を考えてはいない。官僚を真似る政党は全体像をもたないと相互に矛盾した政策を言いかねない

脱貧困の経済学 (ちくま文庫)

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