日本の自殺と経済回復・停滞

 一昨年9年ぶりに年間自殺者数が3万人を割った。昨年(2013年)についてもほぼ一昨年と同様の傾向が続いていて、内閣府の統計ページではまだ昨年11月までの数字しか掲載されていないが、12月の数字次第では年間の自殺者数の減少が傾向として続く可能性がある(参照:自殺の統計)。一昨年からのマクロ的な数字でみた「減少傾向」については、専門家の指摘のようにさまざまな自殺の要因に対する社会の取り組みが意識的・制度的に改善された成果であるかもしれない(参照)。ただ景気循環との関係があることはしばしば指摘されてきた。10数年前に野口旭さんとの共著『構造改革論の誤解』や拙著『日本型サラリーマンは復活する』でも景気の悪化という循環的要因と自殺者総数の増加との関係を指摘し、さらに構造的な要因にこの循環的要因が作用することで、自殺要因の複雑化が起こることも指摘している。その意味でいうと一昨年の夏以降の自殺者総数の一応の減少傾向は景気の回復の遅行現象とも考えることができるのかもしれない。もっとも総数もきわめて深刻な状況のままだし、また個々の方々の自殺の背景を景気の良し悪しのみで判断するつもりもない。以下では景気と自殺の関係をとりあげた論文のリンク。

桑原進「景気変動と自殺率に関する経済分析 ―企業行動からのアプローチ」http://www3.grips.ac.jp/~pinc/data/08-16.pdf
An economic interpretation of suicide cycles in Japan
Jahyeong Koo and W. Michael Cox
http://www.dallasfed.org/research/papers/2006/wp0603.pdf
松林 哲也 上田 路子 「福祉・経済政策と自殺率 : 都道府県レベルデータの分析」
リンク先の下に論文あり
http://www.jcer.or.jp/academic_journal/jer/detail4642.html