常見陽平『「就社志向」の研究ーなぜ若者は会社にしがみつくのかー』

 常見さんの日本の雇用システムと就職活動、このふたつの切り離せないが、とりあえずは別々の側面を具体的なデータと事例をもって分析した、日本社会論となっている。

 まず最近の若者の会社に長期に就社する状況を説明し、また「新卒一括採用」というシステムが経済合理性をみたすものであることを指摘する。そして若者の就活の状況をさまざまな側面から論じている。その上で学生の「就活」が経済的にはムダだという意味で「悪」であると断定する。学生の就活が悪なのは、彼等が就活を「受験競争」(客観的な基準による判断)と同じものだと誤解していることから生じる。これは正しい指摘だろう。また内定後の理想の配属先を求めて活動する学生たちの「配活」の指摘は面白い。