名古屋市立大学の『オイコノミカ』に掲載された専門論文です。こちらでそのうちpdfで読めるでしょう。
ハイエクとミュルダールはノーベル経済学賞を同時受賞していますが、当時から今日までまったく異なる立場の経済学者であることは「通説」であると思います。ハイエクは『隷従への道』で介入主義的なあり方がやがて国民の「隷従」化に至る過程を描いたのに対して、ミュルダールは福祉世界論を主張しました。
ところが両者はそのキャリアの比較的初期の段階で、お互いの貨幣的景気変動理論を中心に理解を深め、それを尊重して、やがてハイエク編集の論文集にミュルダールが寄稿していく、という成果として結実していきます。
電子メールがないので国境をまたいだ文通で、編集作業をすすめていくのですが、その膨大な書簡を藤田論説はわかりやすく整理し、両者の個人的な交友関係にまで光をあて、まったく埋もれていた両者の関係をよみがえらせることに成功しています。ハイエクとミュルダールが、ケインズの『一般理論』に限定的な評価しか与えていないところは面白いですね。
ハイエクとミュルダールの「通説」的な立場からの比較は、下のバーバーの本にも解説がありますのでぜひ一読ください。
グンナー・ミュルダール ある知識人の生涯 (経済学の偉大な思想家たち)
- 作者: ウィリアム・J・バーバー,田中秀臣,若田部昌澄,藤田菜々子
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 2011/05/31
- メディア: 単行本
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