『ブラック企業に負けない』(NPO法人POSSE 今野晴貴・川村遼平編)

 頂戴した本です。どうもありがとうございます。これは頂戴することができて幸運でした。薄い冊子であるにもかかわらず中身はとても充実していて、あっという間に内容にひきつけられて読んでしまいました。不況が長期化する中で、いわゆるブラック企業という組織的なパワハラ志向企業、職場崩壊企業、違法脱法労務企業が増えてきています。日本的な雇用慣行ではまま働く人たちを「社畜」化する傾向が強いといわれてきましたが、それが現状の不況の長期化で、本書でいうところの「代わりはいくらでもいる」という状況として加速度化してきたと思います。

 本書が丁寧に実態(固定残業代など。これを扱った章は熟読推奨)やその対策を書いている新卒就職の場でも、このブラック企業の問題、また本書で書かれている自己否定を執拗にくりかえさせるタイプの「自己分析」主義には、本当に警戒を強める必要があると私は思っています。

 先日の『宮台教授の就活原論』のエントリーでも指摘しましたが、「自分探し」タイプの自己分析というのは非常に恐ろしい落とし穴をもっている手法だと思っています。それはほどよく理性的にやればまだしもですが、あたかも就職の中心的なものであるといういまの大手就職企業や現場の企業の態度には、このブラック企業を生み出す精神的な風土と共通するものを見出さざるをえません。

 それは「自己分析」がもっている内省的な傾向とまた自己反省的な側面が生み出すものと、ブラック企業が退職強要に使う「自己反省」的手法が類似していることからもわかるかと思います。他者に強要された自己反省・自己省察の危険性は、何度指摘してもしつくすことはありません。具体的には、僕の『偏差値40から良い会社に入る方法』の最終章で書いた連合赤軍のリンチ事件における「自己反省」のケースを参照してください。

 本書は、ブラック企業のあの手この手の『恐怖」を利用した嫌がらせへの具体的な対応が書かれています。就職活動をしているあらゆる人、また特に僕のような学生の就職に携わる人はぜひとも、本書とできれば簡単な労働法の本も読まれるといいと思います。自分が職場でブラックな扱いをうけたときどう対処すればいいのか。本来ならばそれを就活の場で学生は学ばなければいけないツールのひとつだと思うのですが、それはいま現場からは排除されています。

 それがなぜなのか? 真剣に考えるべき問題です。

ブラック企業に負けない

ブラック企業に負けない