ご高著を頂戴しました。ありがとうございます。
改革開放以後の中国の財政金融政策を、ふたつの制度的要因から分析した実証的な政治経済学の著作です。ふたつの制度的要因とは、中央と地方の政治経済的なパワーポリティックス、もうひとつは世界経済との関連です。前者においては、従来の研究で注目されてきた中央政府のレント獲得行動だけではなく、地方政府のレント獲得行動の実態、その経済発展における寄与の度合が本書の重要な焦点になっています。地方政府の積極的なレント獲得行動は、まず金融抑制の面で顕著になり、それは家計を圧迫する一方で、企業の旺盛な成長を導いた。それが金融改革の進展とともに、そのような金融市場におけるレントが減少し、次第に土地市場にレント獲得行動がシフトしていく。これも高い資産インフレをもたらすことで市場にゆがみをもたらす一方で、金融抑制の場合よりもきわめて限定的な形で経済発展にも寄与するという「発展途上国型経済」の一類型がみられる、というのが梶谷さんの本の面白い分析ではないか、と思います。
中国の地方政府、地方経済を中央政府や国際関係の中で考える点で非常に参考になる本だと思います。
現代中国の財政金融システム -グローバル化と中央-地方関係の経済学-
- 作者: 梶谷懐
- 出版社/メーカー: 名古屋大学出版会
- 発売日: 2011/09/09
- メディア: 単行本
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