OECDの金融市場の新指標(FCI=Financial Condition Index)でみるアメリカと日本

 最近、面白いなと思った経済指標を以下に。

日本語の解説:Financial Condition Index∼金融市場の厳しさを計測する試み

http://www.oecd.emb-japan.go.jp/Economy2/%5B11%5Dnews%20letter%202008.10.15.pdf

以下、引用。

FCI はこうした広い意味での金融市場の厳しさを計測するために開発された指標で、具体的には、MCI を構成する実質短期金利、実質為替レートに加えて、実質長期金利社債スプレッド、金融機関貸出態度、株式時価総額から実質 GDP を直接説明するモデルを推計し、各変数の変化が GDP に与える影響を表す程度(推計されたパラメーター)をもとに、各指標の実際の変化を加重平均して求められます。こうして求められた FCI の動きを要因別に見たものが図2で、これによると MCI 同様、短期金利、為替レートに加え、長期金利は緩和方向に動いていますが、貸出態度、株価、スプレッドは 07 年夏以降引締めの方向に大きく拡大し、結果として FCI は MCI とは逆に急速に引締め方向に動いていることがわかります。また、上記推計式を用い、07 年第 2 四半期以降の FCI の悪化はその後1年間の累計で長期金利 2.8%の上昇相当のインパクトがあり、GDP を今後 1 年から 1 年半にかけて 1.7%ポイント程度押し下げうると試算しています。こうした結果は、あくまで過去における金融関連指標と GDPの統計的な関係を誘導型による簡便な形の推計から得られたものであり、例えば金融危機がもたらす不確実性の大きさが経済活動を萎縮させることを通じた効果を計測しきれていない等の問題がありますが、それでもなお、金融市場の厳しさが実体経済に及ぼす影響を計る一つの手がかりを提供するという点で重要な役割を果たしているといえるでしょう。

最近のアメリカや日本のFCIはどうなっているか?

QUANTIFYING THE EFFECT OF FINANCIAL CONDITIONS IN THE EURO AREA, JAPAN, UNITED KINGDOM AND UNITED STATES
http://www.olis.oecd.org/olis/2009doc.nsf/LinkTo/NT00000DAE/$FILE/JT03260907.PDF

Figure11aとbにあるFCIの直近の動きをみてみると、2008年のQ3において急激な金融条件の引締めをどの経済圏も経験している。しかし直近(2009Q1推計値)では、アメリカは反転(金融条件の緩和)、ユーロ圏は現状維持、そしてイギリスはかなりな反転を経験している。どの国もそれぞれの緩和に貢献しているのは、実質利子率効果、つまり金融政策の貢献が大きい。イギリスは実質為替レート効果の貢献も大きい。また日本の金融条件はひとり下降したままである。貸出条件やまた安全な資産(国債)と社債とのスプレッドの拡大などが、日本の金融条件を悪化しているようである。