TBSラジオの「荒川強啓 デイ・キャッチ!」で最低賃金引き上げについてコメントしました(http://www.tbs.co.jp/radio/dc/)。
厚労省の審議会は最低賃金を現行制度の下では最大幅の引き上げを行うように答申しました。三年連続です。今年度の最低賃金は、全国平均で時給を18円引き上げて798円とするのが目安になります。安倍首相はこの引き上げとその幅拡大を強く支持しています。雇用重視の姿勢をさらに鮮明にしていますね。安倍政権の経済政策がリフレ政策、特に雇用に重点を置いたものであることと並ぶ、働く人たちのセーフティネット拡充からも非常にいいことだと思います。これは欧米ではリベラル政党の政策ですが、日本では保守政党の方が積極的であり、「保守」とはそもそもなんなのか、この点でも非常に興味深い検討材料といえます。
さて最低賃金を引き上げると、それは失業の増加に結びつくと指摘されています。しかし労働需要が拡大し、今後も拡大をすすめる政策(リフレ政策)と並行して行うならば、最低賃金が失業の増加に結び付くとはいいがたいと思います。現実に安倍政権になって二年半、最低賃金は三回も引き上げることになりますが、失業率は低下し(失業者数減少、就業者増加も重要)、有効求人倍率も最高の水準のままです。最低賃金の負担を労働需要の旺盛は拡大が十分に吸収していることがわかります。
もちろん最低賃金はすべての働く人たちに適用されますが、それを守るためにはミクロ的な政策(法の順守を行わせる仕組み)がより重要になっていくでしょう。ただ労働需要の堅調な拡大(世間的な表現では「労働者不足」)こそが、そのような「法の順守」にも大きく貢献することを見逃してはいけません。
私の最低賃金と労働需要の拡大との関連を扱った分析は、『不謹慎な経済学』に収録されてますのでご参考下さい。
また最低賃金制度が生活保護の水準を上回ることも整合的なセーフティネットのためには重要です。なぜなら日本の生活保護は働くインセンティブを奪ってしまい、いわゆる「貧困の罠」に従属させやすい制度だからです。その意味でも昨年、生活保護水準より最低賃金が上回ったことは評価できます。さらに最低賃金を上げやすい環境(マクロ経済環境の拡充)をしていけば、生活保護水準自体の改善もしやすくなるでしょう(もっともそれ以外の問題も生活保護についてはありますが)。
リンク先
厚労省 最低賃金制度 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/chingin/minimum/minimum-01.html
- 作者: 田中秀臣
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