砂川判決についてのメモ

砂川判決(裁判例情報)の要旨、判決全文
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55816

日米安全保障条約
http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/docs/19510908.T2J.html
部分抜粋
「平和条約は、日本国が主権国として集団的安全保障取極を締結する権利を有することを承認し、さらに、国際連合憲章は、すべての国が個別的及び集団的自衛の固有の権利を有することを承認している。これらの権利の行使として、日本国は、その防衛のための暫定措置として、日本国に対する武力攻撃を阻止するため日本国内及びその附近にアメリカ合衆国がその軍隊を維持することを希望する」。

「通説」的な主張:「砂川判決は日本の個別的自衛権に関するもの。集団的自衛権についてはまったくふれてない。もしくはふれててもそれは米軍に関するもの。しかも主論ではなく傍論にしかすぎない」。

「通説」的な主張へ反論

佐々木惣一の「憲法第九条と自衛権」(by田中秀臣)における日米安保条約の位置づけの解釈など

週刊新潮』2015年7月30日に掲載された座談会「なぜか疎外されている「集団的自衛権は合憲」の憲法学者座談会〜違憲学者は根拠を示せない! 」百地章、浅野善治、長尾一紘

記事の概要はこちらにも詳しい。

砂川判決の「通説」に対しての反論。
「百地 多くの違憲論者の反論は間違いです。学生は刑事特別法違反の罪で起訴されましたが、この事件ではそもそも駐留軍を保護する法律は許されるのか、という点が争点となりました。駐留軍が違憲なら、それを保護する法律も違憲。そこで駐留軍と当時の日米安保条約の合憲性が争われ、最高裁は駐留軍を合憲と判断しました。52年に発効した旧安保条約の前文には「国際連合憲章は、すべての国が個別的及び集団的自衛の固有の権利を有することを承認している。これらの権利の行使として、日本国は(中略)国内及びその附近にアメリカ合衆国がその軍隊を維持することを希望する」と明記されています。最高裁はこれを踏まえて判断したのですから、個別的自衛権集団的自衛権の両方を認めたことになる。傍論どころか堂々と主論で述べていると思います。
 浅野 国家固有の自衛権の有無を判断したわけで、そこには当然、個別的自衛権集団的自衛権の区別はされていないわけです」。

 twitterより。
 中島岳志氏がうろ覚えですまないけど「本当の保守ならばアメリカ追従が公文書で判明した砂川判決に依存して集団的自衛権肯定などいわない」みたいな発言をしていたと思う。この中島氏の発言を読んだときに、ちょうど『砂川事件と田中最高裁長官』(日本評論社)を読んでた。中島解釈は一面的すぎる。この『砂川事件と田中最高裁長官:米解禁文書が明らかにした日本の司法』(日本評論社)は最近読んだ法律の本の中では最上位に面白かった。著者たちの立場は、いわゆるありがちな憲法解釈の「通説」だが、他方で布川玲子氏の分析は田中最高裁長官の思想を分析していて多面的で興味深い。様な側面があるので、ぜひこの問題を論じた人は同著を読むべきだと思うが、中島氏のように米国従属の産物として砂川判決がでたというのは端的には間違い。

 田中最高裁長官(当時)の法思想と現実的判断にリードされている。もちろん(ろくに資料や本を読まないで断言口調の人たち用に書いておくが)田中最高裁長官(当時)が、米国側に裁判情報を流したことは布川氏らの著作にもふれているように当時も法規に違反している可能性が大きいので、その真相の追求などはまた別問題としてある。だがこの側面だけで判断するのは安易。

 田中最高裁長官(当時)の法思想は自然法思想、それを支持する現実的な政治勢力としても米国(対比としてのソ連)の存在と、米国陣営に属してこその日本の法的秩序の維持という田中の現実的認識が、田中の当時の判断の背景にあることを布川論説は明らかにしている。米国の公文書のコピーも重要な資料。ただし布川以外の論説は読むべき内容に乏しい。

砂川事件と田中最高裁長官

砂川事件と田中最高裁長官