最低賃金と生活保護の関係

 生活保護最低賃金の関係は理論的には、片岡剛士さんと対談した動画でも少し言及したが、生活保護最低賃金だとまずい。解決策は、前者をさげるか、後者をあげるか、あるいはベーシックインカム的な発想で統合するかの三択になると思う。最後の選択肢を模索しながら、現実的には二番目の選択肢をすすめたい。

 なぜ生活保護最低賃金を上回るとまずいのか。この点は片岡さんの利用した図表を用いるとよくわかる。

 図表の詳細な説明は冒頭にリンクした片岡さんとの対談動画をみてほしいが、労働者と経営者の間の交渉力がまず違う。労働者は簡単にいえば生きるための手段が労働だけなため、その維持をするためには最低の生活水準を得なければいけない。他方で経営者はそのような制約はない(食うための資産を保有している)。そのため労働者は常に交渉で下位に置かれてしまう。特に初期保有点が点Iのようなところにきてしまうと、労働者は最低の生活水準さえみたしていない。そのため市場での交渉はぎりぎり生活ができ、なんとか休めることができる休息水準まで買いたたかれてしまう。その水準がE点である。

 ところで片岡さんも私もこのE点におかれた労働者の生活水準を上げる政策が必要だと考えている(具体的な手法については、上記動画参照)。ここでは特に最低賃金を引き上げる政策を考える。政府は最低賃金を最低生活水準を上回る水準で規定する。そうなると価格線はIEからIE’’に移動する。これは労働者の交渉力の不足を、政府が最低賃金の引き上げによって達成したことになる。この価格線の傾きの大きさは主体の得る所得の大きさを示している。

 しかし生活保護の水準が最低生活水準と同じだと仮定し、さらに生活保護水準の方が最低賃金水準よりも高いとしよう。この時最低賃金が実現している価格線の傾きは、生活保護の水準が実現している価格線であるIEよりも小さい。そのため労働者の交渉力を上げることはできない。

 他方で生活保護水準を政府介入で釘づけすることは、日本の現行制度では勤労意欲を奪ってしまう。そのためE点から水平方向に延長した線分の範囲内で労働時間は決まる(最小は労働時間ゼロ=求職意欲喪失状態)。