軽部謙介「消費増税でわかった2400万人の貧困」in『文藝春秋』

 軽部氏のルポは問題提起の点でするどくとても参考になる。今回のこのルポも日本の経済格差が深刻化しているその背景は、貧困層の増加にあることを冷静に解説していて秀逸である。消費税増税にあわせて市町村ベースで「弱者対策」として1万円を一年限定で配る政策を実施したところその対象者が2400万人いた、というのがこの記事の表題の示すところだ。

 「支給されるか否かの境目は、地域によっても家族構成によっても異なるが、総務省によると単身世帯で年収100万円程度、夫婦と子供二人という家族で256万円程度だという。つまり今の日本にはそのくらいの収入で暮らしている人びととその家族が合せて2400万人いるということになる」

 軽部論説はこの「事実」を基にして、日本の相対的貧困率の上昇の背景、生活保護の増加(生活保護世帯216万人は先の2400万人とは別に計上される)、アベノミクスの成長路線への批判的見解の紹介、さらに貧困とナショナリズムについて言及している。特に最後の貧困とナショナリズムの進捗についてはかなり重視しているように読める。

 「しかも2400万人の少し上には、雇用の不安におびえながら生活している数多くの人々がいるのだ」

 軽部氏の報告にはいままさに考えるべき多くの論点が列挙されている。

文藝春秋 2014年 04月号 [雑誌]

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