アベノミクス「三本の矢」は事実上、「1.5本の矢」にしかすぎない。大胆な金融緩和こそがアベノミクスの中心であり、また現在の日本経済の期待が向かう先をコントロールしているものである。本書のメッセージはほぼこれに集約される。そして0.5本と評価された財政政策は、官僚的な利権の巣になることでその機能を十分に発揮できない可能性があることが指摘されている。もちろん費用便益分析を適用することでその経済合理性をみたせば公共事業を粛々とすすめるべきだと、高橋さんも主張する。しかし実態あ官僚たちのお手盛りが依然として続く。
本書には現在、目にすることができるアベノミクス、というよりも上記した日銀のリフレ政策への反論・疑問について簡潔な答えが列挙されている。さすがにこなれていて、これは討論の場で使う人(僕だがw)からみれば、まさにありがたい書籍といえよう。
また後半は、日銀史観と日銀理論、それと格闘してきた岩田規久男日銀副総裁の歩みが描かれていて、ここまで来る道程の長さにためいきがでてしまうほどだ。官僚たちの壁は実に分厚いのだな、実感する。
日本の経済政策の基礎を、実践的な観点から読み解くことができる一冊。類書は多いが、実際にアベノミクスの核を知りぬく人に書いた入門書として広くすすめたい。
こうすれば日本はもの凄い経済大国になる: 安倍内閣と黒田日銀への期待と不安 (小学館101新書)
- 作者: 高橋洋一
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2013/06/03
- メディア: 単行本
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