日本銀行は中央銀行なのかただの“私企業”なのか? 

 昨日の政策決定会合ですが、政策決定の内容を見る前に、twitter上で上念司さんたちと予測をしてみました。

 以下のような恰好の素材があったのでそれを元にしてみたのです。

基金増額10兆円、買い取り国債年限長期化でようやく中立。基金増額5兆円と購入期間の6カ月延長だけでは失望されるおそれも」(国内証券ストラテジスト) ロイター・日銀はミニマム回答なら失望も http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120426-00000083-reut-bus_all

で、僕のTwitterでの発言は以下に。

僕の日銀BS診断wでいうと、http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2012/ac120420.htm/をみればわかるように直近では140兆。ここ数年の最大が149兆なので10兆増やすと大出血サービス。5兆が無難な線でしょうね

まあ、不幸なことですが、その「無難な」線に落ち着きました。なにもしてこない可能性も少しは考えましたが、日本銀行は最近またBSの規模を減らしていた(2月14日以降)ので、上げる可能性が高いと思ったのです。

経験的なものですが、追加緩和の前には十分にバランスシートを縮小しているのがわが日本銀行の行動パターンです。必ずしもバランスシートの規模は、おおざっぱにいえば規模が大きければ大きくするほど緩和、小さくすればするほど引き締め、といっていいでしょう。日本銀行が当面の緩和の基準としているような「基金」の類もこのバランスシートというお皿の上での食材?みたいなものです。

お皿の大きさが大きくならないと盛り付けるものも勢い制限されるというわけですし、また食材を大きくしてもお皿自体が小さくなったりするとあまり緩和の意味はありません。見た目ではなんだか小さいお皿に大きな食材がのるので豪華にみえてもそれは粗末な小さなお皿を隠す効果しかないともいえます。

で、僕はこのエントリーでも最近、日本銀行のバランスシート(BS)に注目する発言をしています。

 今日もちょっと見方を変えて、このバランスシートに注目してみましょう。例えば日本銀行は毎期、決算をして事業報告書を作成し、そして行政コストなども計算しています。

参考:http://www.boj.or.jp/about/account/index.htm/

で、日本銀行の最近の“私企業”としての悩みは何かといえば、日本経済の悪化ではなく、「円高」ですw。そう、日本銀行さんも多くの日本の企業と同様に円高に悩んでいるのですw。

平成23年度上半期財務諸表等 http://www.boj.or.jp/about/account/zai1111a.htm/

平成23年度上半期の損益の状況をみると、経常利益は、▲910億円の赤字(経常損失)となった。これは、為替円高に伴い外国為替関係損益が大幅損超となったことや、保有株式の減損に伴い金銭の信託(信託財産株式)運用損益が損超となったことを主因とするものである。

特別損益は、指数連動型上場投資信託取引損失引当金及び不動産投資信託取引損失引当金の積立てを行ったこと等から、▲433億円となった。

以上の結果、税引前当期剰余金は、▲1,344億円(税引前当期損失金)となり、法人税、住民税及び事業税を差し引いた後の当期剰余金は、▲1,362億円の赤字(当期損失金)となった。

この数年も円高・株安でかなり苦戦を強いられてきた“私企業”日本銀行さんですが、ついに23年度上半期は赤字に陥りました。23年度のものはまだ未公表でわかりませんが、かなりの損失がでているのではないでしょうか?(間違えてたらすみません 笑)。

特殊法人としての日本銀行は行政コストの説明責任を課されていますが、たぶん23年度は行政コストは黒字でしょうね。それだけ円高不況が“私企業”としての日本銀行さんにも押し寄せてくるのです。

解決策はひとつだけです。少なくとも22年度ぐらいの状況に戻すように(1ドル80円台)「緩和」することでしょうね。日本経済のためでなく、“私企業”としての日本銀行さんには一番それがいいのです。ちなみにあんまり儲けても?得するのは政府(財務省)だけになるので、あんまり通貨発行益(剰余金)を計上するほどの大盤振る舞いは好みません。それにあんまり大盤振る舞いすると、かえって国債の価格が低下するなどして(最近やたら増えた長期国債を中心に)“損失”がでちゃうと、またまた“私企業”としては困ったことになるのでそうもいかないのです。

日本銀行さんは、そのライバルベン・バーナンキからもかって指摘されてましたが、自行のバランスシートの拡大については“チキン”(臆病)な状況です。日本経済が窮状に陥っているときに、自行のバランスシートの急増による“毀損”にばかりとらわれている結果、おそらくリーマンショック以降も思い切った緩和ができず、いままた同じ病にとらわれて、自行のバランスシートが改善するぐらいのか細い道(笑 緩和しすぎるとだめですから)を「インフレ目途」という道で見つけようしようとしているのではないでしょうか。

 彼らがデフレが日本銀行の責任でもなく、その政策で解決できる問題でもないということを聞くにつれ、「では、なんで緩和ぽいことしてんの?」と疑問をもたれる方もいるでしょう。

このアンビバレントな態度を一貫して解けるのは、日本銀行が“私企業”だからなのかもしれませんね。