馬淵澄夫前国土交通相の反増税・脱デフレ論

 馬淵さんの日本経済についての考えの根幹が示されているエントリーだと思います。

復興財源に増税は誤りhttp://mabuti-sumio.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/post-9af3.html

復興の議論は、復興債の財源措置のための増税の是非に集約
されつつあることに疑念を感じる。

復興債は復興基本法の定めるところの復興資金確保のための区
分管理による公債と定められているが、償還の道筋を明らかに
するものとする、との定めから10年償還、基幹税などによる
財源措置などの議論となっている。

しかし、この発想は財政法15条による災害復旧のための公債発
行の概念を援用したに過ぎない。

 百年に一度、あるいは千年に一度の地震津波による都市の
消失、社会資本の喪失は区分管理はもとより長い年限での償還
を前提にすべきだ。
16.9兆円とも言われた内閣府推計の被害総額は原発事故被
害などを含まない社会資本関係の総額。詳細はまだ明らかでは
ないが、関係する機関の概算で民間インフラ以外だけでも10
兆円規模の社会資本整備となることは間違いないであろう。
いずれにしても、これらについては見合いの資産が必要な社会
資本として提供されるわけだから建設国債(60年償還)を充
てることは十分妥当だ。
前政権下における、景気対策で行った「掘って埋める」式の財
政出動(公共事業)とは意味が違うのだ。

 このような状況にもかかわらず、なぜ、短期間の償還公債を
規定して財源を税としていかなければならないか、僕にはまっ
たく理解できない。

 いずれにしても、今は何よりも復興と同時に経済をどう発展
させるかに尽きる。

経済発展というパイの拡大以外に現時点で政府がとりうる道は
ない、と信じる。こう述べると必ず、もはや経済の発展などは
望めない、経済至上主義者との決めつけをされるのだが、僕は
経済の世界で生きてきたものとして「持続可能でゆるやかな成
長」を否定するわけにいかない。
忘れてはならないのは、戦後の高度経済成長を経て、世界中の
先進国も名目GDPの2~3パーセント成長、すなわち緩やか
なそして持続可能な成長をめざし、そして実現またはその努力
を積み重ねている。

98年以来の長きにわたるデフレ経済を、所与のものとし、何
ら効果的な金融政策を打ち出そうとしなかった反省こそ、今行
うべきではないのか。

 テレビで僕は景気回復のための金融政策「量的緩和の実施」
を訴えたところ、コーナーキャスターは「お金をばらまく」と
説明した。まったく違う。
金融市場の資金ボリュームを上げるということをご理解いただ
けていない。

やはり、言い続けるしかない。

僕もそうだと思います。メディアはあいもかわらず、小沢vs反小沢、経済について触れるとすぐに官僚の耳学問レベル(日本銀行財務省発のもの)を垂れ流すだけです。メディアの人たちの不勉強ぶりはおそるべきものがあります。また増税志向の財務省増税派の別動隊の御用学者や御用エコノミストにも脅威すら感じるのです。この国でまともな政策を実現するには言い続けるしかないでしょう。

量的緩和の効果 http://mabuti-sumio.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/post-aa4c.html

 一番の課題と言えるのは日銀が実施した量的緩和の買いオペ
の内容である。

白川日銀総裁が「現代の金融政策−理論と実際」でマネタリー
ベースと日銀の取引統計から量的緩和期間のマネタリーベース
の推移を記している。これを見ると、量的緩和期間に当座預金
残高は600%増、保有長期国債は160%増、マネタリーベー
スの増分の87%を長期国債残高で占めていると示している。

しかしながら、日銀のBS上の長期国債の定義は「償還期限が
一年以内の国庫短期証券を除く国債」となっていて残存期間に
ついての区分はない。そのため、残存期間が短くても長期国債
となる。残存期間が1週間でも償還期限10年物は長期国債
なる。しかし、実態は短期証券の買い入れと同じものであり、
オペの意味合いが変わってくる。

量的緩和期間の日銀保有の長期国債平均残存期間は、5.5年
から4.0年へと低下の一途をたどった。つまり、量的緩和
施の実態は長期国債の買いオペと言っても、残存期間1年以下
の割合が高まるオペを実施していたことになる。

白川総裁が、胸を張って実施してきたと称される量的緩和のオ
ペの内容は実は違ったということである。87%という長期国
債残高は実態上は8%にも満たない状況であった。逆に残存期
間が一年以下の長期国債を含め短期とみなされるものは60%
にも達する。

日銀が量的緩和策として実施してきたと称する長期国債オペは
短期オペに過ぎなかったと言わざるを得ない。

そして、短期オペによる量的緩和は需要刺激効果をほとんど有
しないとされる。日銀が少なくとも行った量的緩和は残存期間
の短い国債が中心となっているためバーナンキFRB議長の言
うところの「ポートフォリオ・リバランス効果(日銀当座預金
は利息を生まないため、この残高が大きくなれば金融機関はよ
り有利な運用先を求めて企業への貸し出しや債券・株式投資
どに資金を回し実体経済に影響を与える効果)」を期待しにく
い資産買い入れだったと言える。

 量的緩和の効果が定かではない、とする日銀の言い分はこう
したオペ上の問題をはらんでいることを忘れてはならない。

そして、こうした金融当局のある意味不作為による状況をもっ
て、金融政策の大胆な実行を阻害させることだけは許してはな
らない。

並みの御用エコノミストなど圧倒するような詳細な金融緩和政策についての議論です。永田町では、日本銀行の関連するポチ政治家や御用たちが日夜跋扈しています。彼らインナーサークルの一員からたまたま本音を聞きましたが、やはり彼らのまわりは日本銀行関係者しかいないのです。彼らが最も恐れるのは、日本銀行の仲間たちから排除されることであって、日本の国民が苦境にたつことではないのです。いったい自国の金融政策が効果がないとやる前もやっている間も終わった後も言い続ける中央銀行があるのでしょうか?

仲間内だけの利害関係に無意識・意識的にがんじがらめになっているのでしょう。この恐るべき機関をどう解体・改革していくかが次の政権の大きな課題、それは馬淵さんも意識しているように、日本の経済低迷を打開する最重要なキーでしょう。

馬淵さんのブログやメールマガジンはこれからの日本の政策(経済問題だけではなく復興政策やエネルギー対策などを含めて)を考えるときの重要な羅針盤になっているといえるでしょう。近日中発売という月刊誌での論説とともに今後注目すべきだと思います。