野中モモ編『少女と少年と大人のための漫画読本2008-2009』

  さて現状は、フランスのマンガ家メビウスとその関連作家の調査と読書に追われてて、幸福なのか不幸なのかわからない境遇なのだが、まあ、めったにマンガ評論を書く機会もないのでなんとか踏ん張っている最中である。そんな中本書を手にした。昨年度と同じように個々のマンガ評や選択眼のキャラが立っていて面白い内容である。とはいえ、最近は国際的な観点というか、少なくとも日本で同時期に翻訳されたマンガの動向ぐらい追っている評者に関心がシフトしているのが僕のいまの好みである。その点で今回、同時期の翻訳ものなどに目線を投じている人たちが本書では、三人ほどおられる。ばるぼら氏、ひと手間かけ子氏、泉智也氏である。何十人の中から三人というのは少ないが、ほかのベスト本ではもっと割合が低い。そしてこの三人はやはりほかの戦車と異なり、ユニークなものをえらんでいて面白い。特にひと手間かけ子氏はお名前のようにひと手間かけた選本であり、勉強にもなった。市場大介や復刊『神聖モテモテ王国』など読んでみたいかったり、島田虎之介の『ダニーボーイ』や諸星氏に注目するなど僕と好みがかなり重なる。

 ところで最近、僕は弐瓶勉のすべての作品と新連載のもの、黒田硫黄、都留大作『ナチュン』、F.スミス『ピポチュー』、高橋のぼる土竜の唄』、秋山はるオクターヴ』、河合克敏『とめはね!』、バスチャン・ヴィヴェス、『LiQUID CITY』などのアンソロジーで知った何人かの作家、そしてなんといつても谷口ジロー、諸星西遊などの連載や単行本を好んでいる。『坂道のアポロン」『大奥』『ちはやふる』などの話題作はそれなりに面白いのだが、何か作品の色気に欠ける気がした(草食系マンガ? 笑)。小玉ユキのほかの作品は大好きなんだけどね。

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