個人的にはトミーネ以来の当たり、バスチャン・ヴィヴェスを読め

 このブログは本来はこんなに長く続けるつもりはなかった。しかしまさかの世界同時不況の発生、それに日本のブログ世界での経済問題についての嘘とでたらめの横行、そして何よりもアメコミ論戦の続きでいまに至る感じである。で、最後のこだわりだけど、評論関係を抜かして、梶ピエールさんたちとこのブログの初めのほうで盛り上がったエイドリアン・トミーネと同じくらいに最近、「これはいい!」と思ったのが、バスチャン・ヴィヴェスの作品群。

 すでに日本の一部のマニアの間で熱い支持をうけている『塩素の味』(アングレーム優秀新人賞)は、以前このブログでも紹介したが、極力セリフを排し、エメラルドブルーの室内プールの水面に浮かぶ淡い遊泳の姿でつづられる若い男女の邂逅と別れを描いている。この作品の詩情はいいのだが、やはり作品のベースには、男の若さゆえの無力となさけなさが描かれていることがとても印象的である。フランス語を読めなくてもこの作品の主人公の心情を理解することができる。それだけ絵で読ませる稀有な作品である。ストーリーの一部はここで読める(日本語)

 数日前に注文していたバスチャン・ヴィヴェスの刊行されている残りの三作品をいま続けて読んでいる。まず『彼女(たち)』。これはストーカー疑惑をうけたまったく見栄えがよくない青年と、若い男の子の欲望と夢を具現化したかのようなふたりの女性(フランス風(笑)ツンデレと萌え系)とのエピソード。これもフランス語が読めなくてもだいたいわかる(最後だけググれw)だろう。この三人に感情移入できないでいることは難しいだろう。

 そして新作の『僕の目に君は』。まだ半分しか読んでないけれども、これは男の目(肉体的なパースペクティブのそれ)に映るガールフレンドを描いたもので、印象派wみたいなパステル画風の描き方で、「塩素の味」とまた違う雰囲気だけど、同じくらい斬新な作風。以下の画像をみればどんな雰囲気かわかるでしょう。

『Hollywood Jam』は手元にはあるけれどもまだみてない。ちょっとまだフランス語のレベルがおぼつかないので亀の歩みレベル。それでも絵で説明してくれるような作風なので大丈夫くらいだし、少なくとも上の三作品は、日本でもどこか翻訳を出してもいいんじゃないかな。ともかくこんな才能を知ることができて、やはりマンガの世界はまだまだ刺激的。


 ちなみにいつもレイコさんのやってらっしゃるMBD(マベデ)http://mbd.shop-pro.jp/で僕は買ってます(日本語で取引できるので)。毎回お世話になっているのでもっとBDをひろめるためにも、ちょっと宣伝工作員と化しておきます 笑