マンキューが人為的インフレ政策を放棄した?ーそんなことはない

 池田信夫氏のブログから

マンキューも一時、人為的インフレを提案したが、私がEメールで問い合わせたところ、クルーグマンの1998年の論文も読んでいなかった。その後は、彼もこの種の議論はやめた。

 マンキューの人為的インフレ案としては、マイナスの実質金利政策が有名である。もちろん池田氏もそれを念頭に上記のようなことを書いているのだろう。しかし、彼はマンキューのブログをちゃんと読んでから書いた方がいいと思う。マンキューはブログの8月2日づけのエントリーで、テイラー・コウェンの人為的インフレ政策の記事に関連して、自分のマイナス実質金利政策を紹介している。ここhttp://gregmankiw.blogspot.com/2009/08/case-for-more-inflation.html

 さてマンキューのマイナス実質金利政策については、ハリセルブログが詳しく解説しているので、そこから引用しておく。

FRB議長のベン・バーナンキはより高めのインフレ率を公約するにはうってつけの人物だ。というのはバーナンキインフレターゲットをずっと推奨してきた人物だからだ。かつてインフレータゲットが推奨された理由はインフレ率が決められた範囲から逸脱しないよう維持できることがメリットとして挙げられていた。しかし、現在の状況では「マイナスの期待実質金利」になるため十分なインフレ率を作り出すことが目標になるだろう。
Economic View - It May Be Time for the Fed to Go Negative - News Analysis - NYTimes.com
http://www.nytimes.com/2009/04/19/business/economy/19view.html

 人為的なインフレ政策(要するにリフレーション政策)が必要になる状況というのは、現時点の消費や投資の低迷がプラスの期待実質金利によってもたらされていること。それが高い失業率や経済の不安定化につながるという背景があります。そのため完全雇用を達成するためにマイナスの実質金利が必要とされるのです。

 ところで僕は調べてないのですが(追記:上記のエントリーのように調べました。98年論文もちろん読んでました)、池田氏によればマンキューは同様の主張をしているクルーグマンの98年論文を読まないでこの主張をしたとのことです。それはあたりまえでしょうね。一定の前提に立てばこの種の人為的インフレ政策が提案されたり広範囲に賛成されてもおかしくもなんともないからです。かって日本のケースでバーナンキやブランシャール、スベンソンら広範囲の経済学者がこの人為的インフレ政策を提唱してきました。

 最近ではケネス・ロゴフも同様の主張をいっているようですし、今後の展開次第ではさらに増加するでしょう。

 さて今回はコウェンはスコット・サマーズの提言として、この人為的インフレ政策ーつまりインタゲを検討しているhttp://www.nytimes.com/2009/08/02/business/economy/02view.html?_r=1。サマーズは、Fedが2%のインフレ率にコミットしてそれを実現するために必要なさまざまな資産を購入すべきだと提言している。アメリカは現時点で日本がかって陥ったデフレの罠にどっかりと座っているかどうか微妙な情勢であろう。しかしデフレ圧力は否定しがたく、それに対抗するために人為的インフレ政策が今後、アメリカの論壇においても無視できない主張になるだろう、とコウェンは予測している。