お正月なのに四月馬鹿

 あるブログを読んだら、マンキューもクルーグマンもインフレ期待をコントロールする政策(日本のネットに合わせてインタゲ、誘導インフレ、調整インフレ)を放棄して、そういう主張で日本銀行を批判している岩田規久男先生含むリフレ派は反省せよ、という奇怪な発言を目にしました。たぶんお正月越えて四月馬鹿だと勘違いしているのかもしれません。まだあと三ヶ月も先ですが。

 というわけでほかのブログの成果にただ乗りして申し訳ないのですが、hickisanさんのブログからマンキューの発言を引いておきましょう。

マンキュー曰く

Fedが次に採るべき手は「物価安定」なるレトリックを弄ぶことをやめること、プレスリリースから「物価安定」なる曖昧な文言を削除すること、これである。Fedはこれまで決して明確なかたちでは物価の安定にコミットしてこなかった。ボルカーとグリーンスパンが金融政策の舵取りを担っていた時期におけるインフレ率は平均して2〜3%であった。Fedは望むならばインフレ率を0%にまで引き下げることもできたであろう。今や0%のインフレ率、あるいは0%以下のインフレ率(つまりはデフレーション)の可能性も視野に入ってきており、今こそFedは通常の状態に回帰すること、つまりはFedは2〜3%のインフレ率水準を目標として金融政策を運営するつもりであることをマーケットに知らしめる必要があろう

この文言が言わんとしていることは、Fed名目金利をこれ以上引き下げることはできないが、緩やかなインフレーションの実現にコミットすることによって実質利子率を引き下げることは可能である、ということである。

私の提案を金融政策の根本的な転換を意味するものだと受け取る向きもあるであろう。ある意味ではおそらくそうであろう。ただ、現在のような不安定な経済状況下においては、ラディカルな政策転換(radicalism)*1こそが求められているのではないだろうか。私個人としては財務省が1兆ドルの新規の財政支出にコミットするよりもFedが緩やかなインフレーションの実現にコミットする方に肩入れしたい気分だ。完全雇用と持続的な経済成長を実現する手段として金融政策に頼ることができるのであれば(=その分だけ財政出動の規模を抑制できるのであれば)、(税負担が軽減されるので)将来の納税者のためにもなるであろう。

 まさに岩田先生(もちろん不肖田中も)がもう何年にもわたって主張してきたデフレ脱却のためのインタゲを採用すべきだと、「ラディカルな政策転換」つまりレジーム転換をすべきだと説いているわけです。ちなみに岩田先生たちも『昭和恐慌の研究』などで主張しているインフレ期待に作用する政策の一種である物価水準目標をマンキューは主張していることも注意点です。

 さてクルーグマン自身は、night_in_tunisiaさんのブログにもありますが、マンキューの発言をさらに極端に表現しています。

簡単に言うと、中央銀行は無責任になることにコミットしなければならないのだ

 もちろんクルーグマンも過去にこの政策を日本銀行にすすめたことがありました。無論、いまのアメリカFRBにもすすめているわけです。日本のネット風にわかりやすく書けばもつとインタゲしろ!と。

 というわけでどこかのブログの四月馬鹿エントリーでは冴えないジョークが書かれてあったようですが、初詣ももう少しですのでセンスのない四月馬鹿ネタをいわないように(だまされないように)しっかり厄払いしておきたいものです 笑