脱デフレを考えるためのいろんな図表

その1 脱デフレのための政策オプション一覧(『経済論戦の読み方』2004、講談社現代新書を大幅改変)。ただし「伝統的」「非伝統的」というのはもともと日本銀行の悪質なイメージ操作の産物的修辞であり、使用すべきではないと本来思いますが、まあ、慣例にしたがって利用してあるだけです。

貨幣発行益の利用、長期国債の日銀直接引き受けなどのオプションは別に「財政政策」「金融政策」などと官僚的な縦割り感で区切る必要もない。ここらへんは政府と日銀の協調あるいは、政府の日銀への失望(政府紙幣発行のケースなど)を示すだけである。

その2 物価水準目標のイメージ図(田中秀臣ベン・バーナンキ講談社勝間和代飯田泰之宮崎哲弥『日本経済復活一番かんたんな方法』(光文社新書)参照)

簡単な説明:過去のデフレによって生じた負のギャップを高いインフレ率を数年続けることで埋め合わせるというリフレーション政策と、その後に低めのインフレターゲット政策に移行するという「合わせ技」の組み合わせです。バーナンキが学者時代に提言したものです。いまではマンキューやクルーグマンらも同様な主張をしています。リフレ期間内では、物価水準目標(プライスレベル・ターゲティング)と、その後の長期的なインフレ目標(インフレ・ターゲティング)の二段構えを行います。インフレ期待を形成する上で、短期と長期のインフレ率についての異なる情報を市場関係者に与えることになるでしょう。消費者物価指数で見ると、日本でデフレが始まったのは一九九八年です(解釈によって違う年を想定してもかまいません)。そこでこの年を基準年にして、デフレではなく一〜二%のインフレがその後毎年継続したと仮定します。その場合、デフレのもとで実際の物価水準経路とのギャップが存在していることになります。そこでまず、例えば四%程度の高いインフレを続けて、理想的なインフレ率が続いたと仮定した場合の物価水準まで、現実の物価を引き上げていきます。そして実際の物価が理想的な物価水準経路をとったときの物価に追いつき、ギャップが埋まった後は、目標インフレ率を下げて、一〜三%の範囲の低インフレ目標を採用します。バーナンキが提案するのは、政策を開始する時点であらかじめ、こうした高インフレ率のリフレーション政策の過程とその後の物価安定を目標とした低いインフレ目標の双方についてコミットすることによって、中央銀行が明確に市場に意図を伝え、市場のインフレ期待に働きかけるという政策です。図表をみるとさらにリフレ過程の達成時期を早めればはやめるほどリフレ過程の時期のインフレ率が高めになることもわかると思います。

その3 日本銀行リーマンショック以降ほとんど金融緩和を異常なほど抑制した

 これは岩田規久男先生が『日本銀行は信用できるか』(講談社現代新書)などで指摘した図表です。直観的にも日本銀行が先進諸国に比較して、実に1年以上にわたり金融緩和の規模を抑制したのがわかります。詳細は岩田先生の本の43頁を参照ください。岩田先生のにカナダ中銀をサービスでつけておきました。この図表の事態は基本的に昨年末の新資金供給方式まで変化はありません。いかに日銀が金融緩和のタイミングが遅過ぎ、また現在もそうですが過去1年以上小規模な金融緩和姿勢を維持していたかがわかると思います。これが今日の先進国の中でも断トツのデフレ率の定着、また失業率の高止まり、成長率の低下(=生活者の暮らしの悪化)をうながしているか明白です。これに対して日銀は日銀のバランスシートの規模は経済規模に比較して欧米よりもでかいといっていますが、それは単に危機以後の増加率(=金融緩和姿勢)をみるという議論から目をはなさせるための単なる詭弁です。恥を知れ、といいたい。

その4 リーマンショック後の失業率とインフレ率の推移

あまりうまい図表ではないですがw(秘書募集中w だんだん疲れてきてるときの作図なので)。ただデフレの進行と失業率の連動がわりとわかるでしょう。90年代から01年ぐらいまではこれがさらに綺麗にでていました。今回のデフレの深化と失業率の高止まりあるいはその深化がすすまいことを祈ります。(後記)失業率が元データで5%台いってるのに表示されてないw おかしい。入力ミスかな。やはり疲れてたんだなあ。まあ、あんまし事態かわらんけど。5%台いっていまは4%台後半。

その5 実質GDPと失業率 

上の図と重ね合わせるとデフレの悪化、失業率の増加、成長率の低下が三拍子そろっています。基本的にこの3つを同時に説明するには、よく日本銀行が需要不足は生産性の低下が原因だとかいう支離滅裂な論法はともかくとして、強い構造問題仮説はいまの停滞とほとんど無縁であることが示唆されます。もちろん実証が必要な議論ですが、総需要不足原因論を乗り越える説明はみたことがないか、そうとう後付けの議論になります(対抗仮説の追い貸し仮説などへの反論はこの岩田先生のペーパーを参照ください)。

その6 総需要不足についてのAD-ASを用いた説明の図表

 経済学の標準的な説明である総需要ー総供給分析(AD-AS分析)を利用した作図です。これを用いるコツとしては、充実した成長戦略(日本経済のムダをなくす政策)を行うには強力な脱デフレ政策=リフレ政策が必要になることだと思います。

その7 GDPギャップとインフレ率

IMFGDPギャップの推計(同様なものが内閣府OECDからもでているが、その差はここでは本質的ではないと理解する)とインフレ率の推移。だんだん疲れがみえてきて 笑 英語の説明になっているが。疲れてしまつたせいか、IMFのコアCPIを利用してしまったために石油関連を抜かしたコアコアCPIではないため、リーマンショック直前にインフレ率の一時的上昇とGDPギャップの深化が併存してしまっている。コアCPIの上昇も一時的なものであり、またコアコアCPIはこの時期下落し続けていた。赤いのがコアCPI、黒線がGDPギャップ。後者はもちろん総需要不足を理念的に表しているものである。現状の総需要不足は推計はおおよそ25兆円から30兆円規模であると推定される。


その8 マネタリーベースとマネーサプライの図

その9 昭和恐慌の教訓:昭和恐慌前後の株価、生産指数、為替レートの推移(安達誠司・田中『平成大停滞と昭和恐慌』より)

その10 昭和恐慌の教訓:高橋財政期前後の株価、生産、物価(安達誠司・田中『平成大停滞と昭和恐慌』より)