円高論者は日本経済を潰すのか?

 年末にこのエントリーhttp://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20081224#p1で以下のようなことを書きました。

 報道などでは円高によってホンダやトヨタなどの自動車産業は大幅な赤字を経常し、非正規雇用の「雇い止め」などリストラも大胆にすすんでいる。経営陣の発言では過去に類をみない危機的状況だという。80円台後半までつけている円高が、日本の代表的産業を苦境に立たせているのに、なんで国力があがり、円高が望ましいのか、まったくわからない。円高が企業を淘汰し、過当競争をふせいで、経済効率をあげる、という見かたがある(これを清算主義と呼ぶ)が、この自動車産業の例をみてもわかるように、超優良企業が、その国際的に定評のあるすぐれた技術や販売力で評価されずに、予期せざる為替レートの変動だけで窮地に追い込まれるとしたら、いったい何を理由に淘汰がいいというのだろうか? この種の清算主義は、不況に直面したときにしばしば世上で話題になる皮相な考えである。

 これをより経済学的なロジックで説明してあるのが、岡田靖さんのコラムです。
 円高イコール交易条件改善は事実でない、輸出産業の受けた被害

 岡田さんは以下のように書いています。

だが、円高メリットの正体である交易条件を見ると、驚くことに0.4%しか上昇していないのである。つまりこの間の円高は、旅行者や輸入者には大きなメリットをもたらしたが、国民経済全体ではなんの利益をもたらしてはいないのである。それどころか、40%の円高によって輸出産業は壊滅的と言っても過言ではない打撃を受けつつある。鉱工業生産が前年比30%の減少を続けているが、輸出金額も同様に30%以上の減少を続けているのだ。こうして、日本の最も優れた生産性を有する産業が大きな打撃を受けることは、日本全体の生産性の低下、要するに日本人の生活水準の低下を引き起こすことになるのである。

 岡田さんの論説は非常にわかりやすいですね。ところで円高論者(いままでの円安が異常であり、「強い円」こそ望ましい)としては、最近は、『世界』2月号に寄稿していた齋藤誠氏が思い当たります。もちろんそれ以外にも無数にいるのですが…orz。