インフレターゲット採用への第一歩

 フィナンシャル・タイムズは、FOMCが事実上のインフレターゲットを採用したという署名記事http://www.ft.com/cms/s/0/8c3e8044-fe24-11dd-932e-000077b07658.htmlを書いていますが、これはあくまでもメンバー個々が抱いている物価安定と最大雇用を達成するというミッションと矛盾しない、長期的なインフレ率は何%かを提示したものでしょう。そのため記事にもありますが、公式のインフレターゲットは政策決定メンバー全員の合意ですが、今回はあくまで個々のメンバーの望ましさの範囲を示したものでしかありません。そのためメンバーが変わったり、またメンバーの望ましさの基準が変われば変化してしまうものでしょう。


 日本銀行も類似のものを公表しているのはよく知られていることでしょう。この日本銀行の「工夫」は、当時、日銀の宣伝部隊によって「インタゲを超えるもの」として喧伝された経緯がありました*1


 ところが今回は、バーナンキ議長の発言、またはインタゲをめぐる電話協議の報道などを勘案すると、これは公的なインフレ目標導入のための重要な布石ではないかと思います。つまり個々のメンバーの見通しを提示することで「インタゲを超えた」と言い張るどこかの責任回避が得意な厨銀と異なり、デフレと高すぎるインフレの回避にちゃんとコミットする中央銀行の総意としての公的なインフレターゲット導入のための布石とみていいでしょう。

FRBのソース)http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20090218a.htm

*1:実際に当時の日銀総裁はこれがインタゲであることを否定していたと記憶する。また日本銀行はこれは単に委員の個人的な見通しとしか見做しておらず、その個々の見通しを集約して、それを政策運営に結び付ける努力はしていない