小野善康『SIGHT』雑感

 いま出ている『SIGHT』でのインタビュー記事。

「アメリカがものを買わなくなって日本の経常収支が悪化したら円安になる。円安になったら日本製品は国際的に安くなる。だから生産効率を上げてコストを下げたのと同じで、売れ出す。つまり、アメリカが不況になると、円安調整で日本は勝っていくんですよ。だから、「アメリカがくしゃみをしたら日本が風邪をひく」というメカニズムが逆になる」

「景気が悪いと輸入が減るから、貿易収支がよくなって円高になる。だから、日本企業はますます競争力がなくなったと騒いで、もっとリストラして、ますます景気が悪くなる、そういう関係なんです。そうでしょ? 日本は今、貿易赤字が最悪とか新聞に出てましたが、それは外国の景気が悪化して、輸出が減っているからです。だから、短期的にはともかく、しばらくしたら円安になると思います」

 為替レートの調整が経常収支(貿易収支)の不均衡に影響を与えるという話で、これに日米間の好況・不況シナリオがドッキングしている。為替レートが経常収支の不均衡を調整するかどうかは疑問だし(まったくの否定はもちろんできない)、さらにいまの状況では、「アメリカがくしゃみをしたら日本が風邪をひく」状況が続きそうだ。小野先生と違い、僕は(日米の好況・不況の度合いが直接に規定する)経常収支の赤字・黒字が為替レートを調整するとはちょっとわからないと思うし、むしろいまの観察からは日米の実質金利や金融緩和の程度が為替レートの動きを決めているように思える。金融緩和の程度が米国が日本よりも上回っていれば、円高ドル安がすすむように思える。

 『世界』の座談会の発言ではさらに今後は円安がすすみ、貿易摩擦が再炎するという。本当だろうか?

(付記)いずれにせよ、僕の数日前のエントリーはちょっと不正確だったが、小野開放体系を読んだときの「現実にあってないなあ」という感想を裏付けてるために、このエントリーは小野開放体系祭りをするという公約どおり書いている。それに小島さんの中途半端な小野開放体系の弁護を読むとますます闘志がわいてきた 笑。必要があればどんどんエントリーを追加する。基本的にこの小野開放体系も金融緩和に極度に否定的なロジックのひとつとして利用されているが、何度も強調していいが、アメリカと日本の好況・不況のポジションの変化だけで為替レートの動向を構造的に説明するのは僕には現状を理解する上で単なる思考上の足枷にしかすぎないように思える。