最悪の議論のひとつのサンプルとして必読

 今日の朝日新聞エマニュエル・トッドの「今や米国は問題をもたらす存在」というインタビュー記事。下の町山氏の本のところで、「だめなアメリカ→サブプライムもアメリカがだめだから→アメリカ帝国だとかドル基軸の終焉」とエントリーに書いた後に、このトッド氏の記事を読んでまさにこの典型的な議論が当てはまるのである意味微苦笑。その典型ぷりが気に入った?のではさみでジョキジョキしてファイリングしときました。そういう意味でおススメ(なんじゃ?)。

 中国の貿易構造は「歪」。なぜならGDPの40%超が輸出だから。しかもそれはアメリカ相手なので、アメリカの「反道徳的」な消費によって支えられている。だから「腐った証券」による仕掛けが崩壊したから中国含む世界は構造的需要不足に陥る。だから中国はもっと自分の畑=内需を耕せ。まあ、間違った理論はすべて間違っているのではなくいくばくかの真理を含みますが*1、そうはいっても次のトッドの発言がまさに「最悪の議論」の典型に僕には思えます。

 欧州は保護主義的な障壁を確立し、域内貿易を優先すべき。原料供給国のロシアとも提携すればすごく安定的。欧州だけではなく、北米圏、極東圏も保護主義圏をつくれ、というのがトッドの提案。

 「でもトッド、それどうして?」と田中のこころの声

 「経済圏をつくれば反道徳的な消費大国アメリカから切り離されていやでも各国とも内需に目がいくからさ」と僕の脳内トッドの答え

 「でもみんな相対的に貧しくなるね。いままでの貿易利益を放棄するってことだから」と田中心の声

 「それは問題の本質じゃない、ともかくアメリカと世界が切り離されることが必要だ。いまや米国の存在そのものが問題だからだ。反道徳的で自分中心的な貿易利益よりも保護貿易圏をつくってその後でほかの貿易圏と協力するのだ」と脳内トッド。

 さて皆さんはこの(脳内トッド含む…そんなにトッドと違わないことは新聞読めばわかりますがw)意見どう思いますか? 僕にはまさに30年代の大恐慌から帰結した最悪のケース(世界経済のブロック経済化)のただの焼き直しであり、そのときにも主張された経済人の終焉と倫理的な自我への要請という日本・ドイツの枢軸国のイデオロギーと並行したものを見出せますが。さて、現実がトッドのような主張にならないで、各国が内向きにならないことを祈りましょう。

*1:例えば中国が国内の経済格差に向き合うとか、構造的な問題に対処して国内に新規の投資対象を開拓するとかはいいんじゃないでしょうか