貿易赤字は悪じゃない。特にいまの日本経済では復調の印だ

 単に言葉の印象だけだが、「円高」は「高い」から「いい」とか、「円安」は「安い」から「悪い」とか、そんな素人だましに等しい印象論のメディアの記事が多い。それと同じで貿易赤字が、まるで家庭の「赤字」のように「悪」扱いである。そもそも家庭レベルだって赤字が単純に「悪」のわけもない。

 貿易赤字が1兆円近くだそうだが、これ自体はまったく問題ない。まるで赤字=悪みたいにとりあげられている。中身をみれば円安効果の成果だと思うが輸出が三か月連続で増加(10%増)、他方で消費が堅調で輸入も増加(10%増)。

輸出が増加基調に転ずると純輸出は減少する。これが経験則。

 つまり円安が輸出に効果を与え、また円安や資産効果などによる消費増が輸入を増加させている、そのダイレクトな現象としてこの貿易赤字の継続はみられる。この貿易赤字を「悪」ととらえたら、そう考える人は、日本の経済制度と単純な経済学に無知なだけだ。むしろこの現象は現時点のリフレ政策の成果として喜ばしいともいえる。

 期待インフレ率の上昇⇒資産効果→(期待)所得の拡大→消費拡大→輸入増加
 円安→輸出増加→国内所得増加→消費拡大→輸入増加

などという輸入増加の経路があるだろう。

 もちろん輸出増加の方をみれば、国内雇用の増加を生み出す役割も大きい。よく外需と内需をわけて、日本は内需中心だから外需が伸びても意味がないとか、あるいはすでに海外に生産拠点が移っているので国内雇用は伸びないという、経済学的にも事実からもまったくのトンデモな意見が流通している。前者はまず内需と外需をわける合理的理由もない。

 何度も書くが、このように輸出増加に転ずると、純輸出(輸出ー輸入)は減少する傾向にあるが、これはまさにリフレ政策の効果の表れといっていい。ちなみにこの傾向はしばらくは続くが、やがて調整されていくだろう。