ポール・クルーグマン『クルーグマンの国際経済学』

 クルーグマンとオブズフェルドの両者の定番テキストなのに、なぜか題名は「クルーグマン国際経済学」 笑。

 最初の翻訳は購入したが、それからはまったく買っていない。なのでこの本を購入したのは20数年ぶりになる。最初の翻訳がいま手元にないので詳細に比較することが難しいが、上巻の内容をペラペラみたかぎりでは、最も大きな変更は、発展途上国と先進国が貿易を行ったときに、両方の経済圏に及ぼす経済効果により重点がおかれているように思う。例えば中国などと先進国が交易をおこなうとどのくらい先進国は不利か? これについては交易条件から、先進国はほぼ一貫して交易条件が有利であり、中国などは一貫して悪化していることが示されていて、「通説」とは異なることが示されている。

 またアメリカとメキシコとの貿易を例にとり、グローバル化の利益は本当にあるのかないのか、反グローバリズムの動向を意識しながら詳細に説明しているところもかなり昔と印象が違う。全体的に政治経済学的な側面が増えてきたことがいえるし、より中国などの新興国経済への配慮のウェイトが増えていると思う。

 特に最近の日本のTPP論争からも、上巻の後半における貿易政策の政治経済学的分析は、ひとつの座標軸を得るためには、学生から社会人まで読んでおいて損はない。

クルーグマンの国際経済学 上 貿易編

クルーグマンの国際経済学 上 貿易編