日本の経済政策雑感

麻生首相、消費税10%案を検討=2段階引き上げも(時事通信)
リンク先が途切れるかもしれないけれど、まあ、それが日本の現実なのでそのままに。

すでにこの減税中心の経済政策と消費税増税への明確なコミットのもたらす効果については、このエントリーに書いたけれども、数日前とはいえ、ブログの弱点でもう忘却されてるかもしれないので再リンクと一部抜粋。

 :しかし仮に首相が本気で最優先で景気対策をしようとするならば、減税の財源に増税をする(厨房でもわかると思うが、その効果はプラマイゼロに動くだろう。時間の間隔をあけても今日10万円もらえるが明日10万円返すようにといわれたらあなたはそのお金を使うだろうか?)ということを同時に掲げるのは、景気対策への本気度を十分疑わしくするものだろう。:

 例えば今回の経済対策の手法である給付方式(お金を直接配布したり、クーポンを配る)や一時的な定額減税方式などの効果が、将来的な増税との組合せのもとでは著しく効果を損ねてしまう(あるいは将来的な増税にコミットしていなくても財政政策単独としても効果がほとんどない)ことは、下の清水谷論『期待と不確実性の経済学』(日本経済新聞)などの業績で実証的に検討されてきたことであった。

期待と不確実性の経済学

期待と不確実性の経済学

 実感レベルでもデフレ不況は、90年代の財政政策では脱出することはできなかった。今回は規模が小さいものの埋蔵金の利用があったが、同時に上記のような強い将来的な増税へのコミットがあればその財政政策の効果が著しく削減されるのは既存の理論・実証・経験的事実からいってほぼ間違いない*1。では、財政政策はどうすればいいのか、についてもここで書いた。

 さて日本の不況局面入りは、もちろん06年3月の日本銀行量的緩和解除、同年7月のゼロ金利解除、そして翌年2月の金利引き上げ、そしてそれ以降、二日前まで継続していた利上げ路線が、引起したことは、高橋洋一氏らの指摘(景気動向指数への参照)で明白であった。

 そのとき同時に定率減税の廃止が段階的に行われていたことを忘れるべきではない。「恒久的措置」といわれたののも関わらず、あいまいな理由のもの(年金の国庫負担への流用だったか? しかしこの理屈は増税のたびにいたることろで繰返される「福祉目的」という嘘くさい言い訳と同じである)06,07年にわたって廃止された。これは高橋洋一氏によれば3兆円強の所得税増税になる。

 「恒久的措置」といいながら事実上そうでなかったことは、政府の財政政策への信頼性を著しく損ねたであろうし、信頼の齟齬を除外しても所得税増税の直接的ショックは、日本銀行の利上げへの実施とコミットとともに日本経済を確実に不況に叩き込んだ。

 そして今回もまたここ数日連続して書いているが、あいかわらず日本銀行は政策決定以外での「異なる声」を利用して市場へ利上げのメッセージを発信した。これで確かに市場は先読みして株価や為替レートに「好影響」がでたからそれでいいのではないか、という指摘もあろう。しかしそのような「異なる声」(リーク)に依存すれば、日本銀行は彼らの「物価安定」という目的を今後うまくコントロールできなくなってしまうだろう(異なる声に市場が関心を払ってしまい、本当の声=金融政策決定会合の「声」を軽視してしまう。これは人々の物価への期待をコントロールすることを難しくするだろう)。

 日本銀行が実際にどのような決定をするかはもちろん現段階でわかるわけもないが、それでも直近の金融政策決定会合ではほとんど従来のシナリオ(利上げ路線)に実質的なブレがなかっただけにその唐突な変化が、参加する委員の表決にどのように反映されているか注目すべきである。さらに将来的な金融緩和へのコミットがないかぎり、日本銀行は事実上「ムダ弾」をうつことになるのではないか、非常に心配である。

 政府も日本銀行も(その抱える人材がここ10年あまりに出してきた最新の理論・実証的分析とはまったく異なる)旧来型不況対策の枠組(ただ単にお金をばら撒く、市場の動向に合わせて金利などを調整する)ということを一歩も出ることはなかった。

 誰でもちょっと調べれば世界の金融危機や不況対策が、(リークなしの)金融政策の主導であることは明白なのに……orz

*1:それでも超短期や家計の金銭的制約=流動性制約が厳しければではわずかな効果があることは否定できない。しかしそれはささいなものであることが清水谷らの実証で示唆されていた