阿部彩・國枝繁樹・鈴木亘・林正義『生活保護の経済分析』

 自分のいまの研究で、「生存権の経済学」あるいは「生存権の社会政策」をどう経済的に基礎づけるのか、という関心から本書を購入して数日前から読んでいる。しかし、この本はそういう理論的な側面だけではなく、所得保障一般についての事実や実証分析を豊富に収録していて、類書がほとんど日本にはないだけにきわめてすぐれた業績ではないか、と思う。

 とくに生活保護制度と隣接している年金、医療などの諸制度との関連、負の所得税などの制度設計と労働供給との関係、ホームレスの実態調査と経済的インセンティヴ(労働供給モデル)との関連、など多くの話題が邦語では本書だけでしか単行本ベースでは読むことができない重要な話題が目白押しである。

 たぶん最近出された経済書の中では、その今日的な問題意識と分析レベルからいって屈指の書籍といっていいのではないだろうか? 僕もまだ全部は読みきっていないけれども、「日本の貧困」に関心がある人はまずは本書を読むことをおススメしたい。

生活保護の経済分析

生活保護の経済分析