大瀧雅之『世界』論説


 読む価値ゼロに等しい高級同人誌ともいうべき『世界』が三月号で経済関係を特集してたのでつい間違って手にとる。あれ? 大瀧先生の論説が。


 一抹の不安がありましたが、要するに「金融立国」とかいう理論的な装飾をほどこしたどうみても衰退産業である金融業を成長産業のように喧伝する経済学者、官僚、評論家、政治家への批判が中心。安全資産である銀行預金から危険資産に家計の選択をプロパガンダで促すやり口への批判。確かに市場中心を説く連中に限って、銀行にお金を預けるよりもリスクをとって資産選択「しなければいけない」という誘導を試みる(プロパガンダの効能を信じている)ようです。まあ、大は郵貯を民営化して、資金をリスク資産に流れるように「しなければならない」といっていた人たちと同じ類型でしょうね。大瀧先生の論説はまたサブプライムローンを、先生なりの視点でわかりやすく整理していて、また池尾和人・櫻川昌哉流の「金融立国論」批判にもなっている興味深いものでした。この論説だけ読む価値は大いにあり。