映画がつまんなくなった、という基本路線?で貫かれた映画時評。作品評ということで最近、自分の参考にしたい(=自分のいまの書評だとつまんない)と思ったのは、この柳下氏の著作とあとは鶴見俊輔氏の書評集の最後の巻。書評にも下部構造としてのテクニックがあり、それがある程度の一般性をもって他の書評者が利用できるものであれば、それはまねをした人ではなく、やはり「本家」が素晴しいことの証であろう。この映画時評にもそんなテクニックが豊富である。
ところで本書の対談でも柳下氏は書いているが、作品を批判するのはわりと容易で、それよりも誉めることが難しい、というのはわかる。批判したり否定するのは無知でもできるし、無知なものが批判したり否定していてもその無知自体が傍からみるとわかりにくいことが多い。「ば〜か〜」とどんな作品に対してもいうのは容易だし、欠点や矛盾をあげていくのはますます容易だ。しかし誉めることは自分の知識や理解度をあからさまにする場合が多い。うっかり見当違いなことを誉めると容易に評価者は傷つく。例えば「日本はこのままいくとキャピタルフライトでドゴーン」とか「株価低迷は宇宙人存在の証拠やアンパンが頭についた人のせい」などというテーマで書かれた本を誉めれば、その誉めた当人こそ「宇宙人ハッケーン」といわれる可能性が大きい。それに対して実は理由も理解していないのにこれらに「ばーか」といっても、理解したうえでいったとしてもその差異は不分明である。
話は大きく脱線したが、本当は書評の下部構造などパクるための見本では本書は無論ない。時評を書きながら100年先の映画の遺産を考えることができる人の本である。
- 作者: 柳下毅一郎
- 出版社/メーカー: エスクアイア マガジン ジャパン
- 発売日: 2007/12/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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それとこれからシネマ、アメコミ関係はこっちの閑古鳥wの方でやる予定http://blog.goo.ne.jp/reflation2008