塩崎恭久官房長官って、なにを言ってたっけ?(2001年日本への旅)


 最近、時論関係もひと段落したので本棚の清算主義を実行しまして、セーフティネット(アマゾン売出し)もせずに一気にブックオフへ投売り、ゾッキ本の資産デフレスパイラルを経験した私ですが、何をいいたいかといいますとそのときに下記のメンバーの本やら論説収録本もあらかた失いました。


 池尾和人、川本裕子、花崎正晴、ロバート・フェルドマン、塩崎恭久、そして深尾光洋(敬称略)


このある種の基準で超豪華なメンバーが2001年の日本の片隅で座談会をひらきました。


 その記録が東洋経済の『エコノミックス』に収録されております。運よく塩崎氏関連で手元にあるただひとつの媒体です(川本、池尾、フェルドマン、深尾さんの本もゆえあってwぜんぶ上記の通りに日本破綻ならぬ資産価格大破綻の途に投じました。末幸アレ、わが蔵書たちw)*1


 さて会は「天国(リフレ)or地獄逝き(ハイパーインフレ、日本破綻)」論者の深尾さんが取り仕切っておりましたところもこの会合の絶妙なバランスを反映しているように思えて香ばしいかぎりです。もういまではこういった過激な取り組みはなかなか再現できずさびしいかぎりでございます。閑話休題

 
 あまり長くかいてもなんなので塩崎氏の主張をいいますが

1 不良債権処理を一気処理(当時の言葉でいえばハードランディング路線)。徳政令でも出して不良債権の穴を国の資産売却、民営化で埋めて*2、そして以下の3の不良?企業の清算効果に期待する。


2 日本経済の問題は収益体質の構造的悪化とこの不良債権問題の先送り


3 「結局はオーバーバンキング、オーバーサプライなのです。だから、セーフティネットを整備して、その過剰な部分*3を清算し、かつそれによるデフレ効果を相殺するような政策を同時に進めなくてはいけないと思います」。当時の日銀でもよくでてきた構造改革(ここでは清算主義丸出しですがw)が目的であって金融政策はそれを同時にサポートするだけという速水路線ですね。


4 3を支持する発言もちゃんとしてまして塩崎さんの首尾一貫性を示して華を添えます。

 「私は、日銀が先に動くことにはそれほど賛成ではない。というのも、金融セクターと実物セクターの両方を改革することを決定するほうが、量的緩和を決めるよりもはるかに難しいからだ。日銀が先に動くと、量的緩和をしたがあとで何もついてこなかった、となる可能性がはるかに大きい。そうなると、逆に悪性のインフレが起きてしまう可能性がある。それゆえ、ミクロレベルでの、銀行ならびに企業の収益力回復の手立てを考え、これまでの先延ばしをやめて、一気にメスを入れることが大事だと思う」


え〜「一気にメス」をいれないおかげでなんとか日本はここまで来ました。でも竹中前議員によれば不良債権処理を「一気」にやったので日本経済は復活したらしいので(ネタ)、塩崎官房長官の脳内ではどうこの経過が処理されているのでしょうか? これからの言動を注目したいところですw


なお『エコノミックス』の同号には歴史的なもうひとつの対談「原田泰・(司会なのに)岩田規久男vs池尾克人」も収録されていて、以下のこれまた歴史的な発言がありますのでみなさんの2001年日本の旅をこの引用で締めくくりましょう。


岩田 今後の課題として、どういう手順でどういう政策をとるべきか、具体的にいっていただけるとありがたいんですけど…。
 池尾 いやぁ、私の考えでは、野球でいえば9回裏に入ってしまったという感じですね。もはや、一回表ならばどういう作戦が可能だったか、ということしか言いようがない。
 岩田 野球は9回で終わりですけど、日本経済は9回で終わるわけではないでしょう。
 池尾 いまとなっては、「衰退の百年」の途上に乗ってしまって、そこから引き返すのはなかなかむずかしい、というのが率直なところです。もちろん、机上の空論になることがわかっていることなら、いろいろ言えますが、それではしようがないでしょう」(107ページ、強調は田中)


 やはり9回裏では終わらなかった。人生は続くry

*1:花崎先生のことは何も存じ上げませんので本も当初からなにも持っておりませなんだ、スマソ

*2:塩崎氏によれば国債ファイナンスすると財政インフレが生じるのでこれを避けるために行う

*3:田中注:これは建設・不動産・卸売・小売だけでなく当時の言葉でⅡ分類企業、潜在的Ⅱ分類企業を含むきわめて広範囲なもの