浜田宏一「新型コロナウィルスへの財政的戦い」

浜田先生の新しい論説。twitterに要旨まとめたのこちらにもまとめて掲載。

 

浜田宏一先生の最新論説「新型コロナウィルスへの財政的戦い」

https://www.project-syndicate.org/commentary/governments-must-use-fiscal-policy-to-tackle-coronavirus-by-koichi-hamada-2020-03


極めて適切な内容です
MMTについて、サムエルソン、ブランシャールら主流派の経済学と対比している。MMTに特権的な地位は否定。また財政健全化にこだわる日本経済を論じた海外ジャーナリストや伊藤元重論説を批判。

浜田宏一論説内容紹介)新型コロナウィルスへの対策は、金融政策は効果の点で回り道。中国は金融緩和政策はすでに採用。今は日本もその他の国も財政政策の方が、直接に感染症対策や自然災害などに影響を及ぼす。財政健全化を目指す財政保守派や財務省はこの感染症・自然災害への追加的な財政政策に反対。
財政保守派や財務省は大切な点を見落としている。人命、社会的共通資本、生活の質などを大切にする視点だ。浜田先生が学生の頃に線形計画法の講義で、日本が地震のような災害に見舞われた場合の輸送問題を解決する最適な方法を問う問題があった。学生たちは輸送コストや距離の最適化から解こうとした。
ハーバード大学から帰ったばかりのその講義の先生(小宮隆太郎氏の可能性ありと知人の指摘)は、疫病の蔓延や自然災害に対してはともかく迅速性が求められると強調した。時間が遅れてしまえば、被災したり病に陥る人たちの人命、生活の質、社会的共通資本などが破壊されてしまうからだ。浜田論説の核心。
財政保守派や財務省は、被災したり病に倒れた人たちの生活の質、社会的共通資本よりも、財政再建を重視しているようだ。リッチ素子氏の最近の論説では、この「重視」が日本政府のバランスシートに対する理解に基づいているようだ。リッチ素子氏の論説では、政府の負債が強調され、財政政策の評価基準だ。
リッチ素子氏の記事はタイムリーなものだったが、他方で政府のバランスシートは負債だけではなく資産もあることに注意すべきだ。「経済規模に比べて先進国で最大の債務を抱えている」とのリッチ氏の説明は、政府の総債務を指し、政府の資産面を無視している。以下、IMFの財政モニターを浜田先生援用。
2018年10月の財政モニターは、日本の公的富はわずかにマイナスであるが、GDPに対する純負債(負債マイナス資産)の比率は、フランスや英国よりも優れており、米国と同様であることを示しています。 日本の財政状態は、New York Timesや他のメディアがしばしば示唆するよりもはるかに健全である、と指摘。
これは最近、僕も海外メディアからの日本への特派員やメディア関係者のほとんどがまるで朝日新聞の代理的スポークスマンみたいな意見しかいわず、あるいは経済では財務省の受け売りでなんの独自性がみられないことを感じてますが、浜田先生も同様の特派員たちの財務省より観点を批判。
もちろんこのような海外特派員たちの日本経済への観点は、経済学の教えるところではない。浜田先生は、ポール・サミュエルソン以来の経済学者たちは、金利が低く、経済に過剰な貯蓄がある場合、財政赤字の拡大は現在および将来の世代の福祉を改善できると述べている、と指摘。
また「今日、現代貨幣理論MMTの急進的な支持者だけがこの見解を持っているわけではありません。 オリビエ・ブランシャールや元欧州中央銀行総裁のマリオドラギなど、主流の経済学者や政策立案者も同様です」と、MMTにくぎをさすのも忘れない。さすがだw
僕は読んでないが伊藤元重氏の読売新聞に掲載された「不安の経済学」を批判。 現在の新型コロナウィルスや自然災害への対応で、「政府は、他の国々と同様に、今や迅速かつ断固として行動しなければならず、保守派の財政的幻想に任せてはならない」と、浜田宏一論説はしめる。
以上!