竹森俊平「2008 サブプライムの悪夢」


 いま出ている『文藝春秋』所収のもの。非常にわかりやすく現時点でのサブプライム問題を理解する日本での決定版的なもの。以下、論点箇条書き。詳細は同誌要参照。というか必読。


1)サブプライムローンが深刻化したのは金融技術の進歩による、ローンの証券化やハイブリッド化が原因。個々のミクロ的主体はリスク分散できてもマクロ的なリスク分散には成功していない、という昨日のエントリーの末吉さんと同じ認識。


2)国債などへの「質の逃避」がみられる現状は、ナイトの不確実性が生じている状況


3)このサブプライムローングリーンスパン前議長の責任だとする批判に竹森氏は妥当とはえいない、と反論。①(緑翁への批判)01年に金融緩和を大胆に行わなければバブルは回避できた→(竹森氏)バブルを気にして不況を起こしたらなんにもならないばかげた考えだ。②(緑翁への批判)04年までの緩和継続はテーラールールなどからも支持できないやりすぎ→(竹森氏)日本のデフレの教訓がグリーンスパンらに「恐怖」としてありそにお要因も考慮すべきだ。


4)グローバル貯蓄過剰が世界的な「バブル」の引き金。竹森氏はカバレロの学説を援用して、新興工業国が国内の投資機会を十分にもたないことがこのグローバル貯蓄過剰の原因とする。


 なおこの点については、竹森論説ではふれられていないが、バーナンキ議長も同様な指摘を行っている(拙著『ベン・バーナンキ』参照)。さらに補完的な見方としてプールの人口構造からの貯蓄過剰の分析もはずせない。


5)日本最大の「不確実性」は、官庁をはじめとする組織の不透明性。年金問題などの非人道的・悲惨・悪しき伝統にこそ最大の問題。