日銀新総裁はゼロ金利に復帰を:若田部昌澄


 献本いただいた(謝謝)『Voice』最新号にも掲載されていますが、若田部さんの論説がネットでも読めます。

http://news.goo.ne.jp/article/php/politics/php-20080411-01.html


 :ところで、「デフレが続いているにもかかわらず2002年からは景気が回復した、だからデフレは景気とは関係がない」という議論がある。まず、日本がデフレに陥っていた1990年代にも2回程度の景気回復があったことを忘れてはならない。そのたびに景気回復が頓挫した原因には、もちろん2000年8月の速水優日銀総裁によるゼロ金利解除といった政策の失敗もある。しかし、デフレの下での景気回復はきわめて脆弱である。現在の景気回復はほとんど枕詞のように「実感なき」と呼ばれるほど勢いが弱い。デフレの下では給料などの名目値が伸び悩むから実感に乏しいのも不思議ではない。


ところで、「バブル崩壊後の低金利による金利収入の逸失分が300兆円余り」という話を聞いた人は多いかと思う。そこから「金利を上げると利子収入が増えて景気が上向く」という珍妙な「論理」を展開する人もいる。この数字は2006年2月23日、参議院財政金融委員会で当時の日銀理事白川方明氏(現日銀副総裁)が答弁するなかで出てきた試算である。当時日銀は量的緩和の解除、そして金利の「正常化」を控えていた。そのための「地ならし」の意味もあったのだろう。ただし、この数字は日銀にとって両刃の剣である。これを強調すると日銀は自らの政策を批判することになるからである。


 日本銀行の「使命」に忠実で非常にきまじめな白川総裁のキャラがよくわかるエピソードですね。ちなみに日本銀行財務省の官僚体質とそれへの政治の依存がもたらす弊害については、『Voice』巻頭の竹中平蔵氏の論説が明瞭です。

資源価格の高騰で、日本でもインフレが到来することを懸念する向きもあるかもしれない。個別の価格が上昇すると人びとは支出を手控える傾向があるから、すぐにインフレになるとはかぎらない。しかし、仮にインフレを懸念するならば、それを制御する格好の手段がある。それはインフレ目標にほかならない。サブプライムローンに端を発する金融危機は、いよいよ正念場を迎えつつある。アメリカ経済の本格的な景気後退はもはや仮定の問題ではない。日本の場合、サブプライムローンの問題は影響が少ないはずなのに景気後退懸念が大きい。この危機にあって中央銀行の責任は重い。