ジョン・スチュワート・ミル(1806-1873)
イギリス古典派経済学の最終ランナー
父ミルからの早期英才教育 三歳でギリシャ語、数学、歴史、ラテン語、自然科学、論理学、経済学(スミス)。
『ミル自伝』 詰め込み教育ではなく、論理能力の養成
自伝草稿 父の「恐怖の教育」
依存性の強い人格→父、ハリエット、ヘレン
1806年出生
1819年 東インド会社入社、功利主義的運動
1826年 精神の危機
1846年 アイルランドの馬鈴薯飢餓、土地制度対策
1848年 『経済学原理』
1859年 『自由論』
1866年 ジャマイカ反乱の政府対応批判
1869年 ソーントンの賃金基金説批判容認、『女性の隷従』
1873年 死亡、『自伝』
イギリスの国会でミル提起 婦人参政権法案(1867)
制度選択 →人間の自由と自主性を重んじる
自由:職業選択の自由、経済的自由
政治的自由、思想・言論の自由
知性と道徳性の向上と、自由の向上は対応している。
杉原四郎『J.S.ミルと現代』(1980)
ミルの現代的意義を三点 社会体制の問題、個性喪失の問題、生産力信仰の問題
ミル『経済学原理』からの引用
「世論が個性的な意見や自由な活動を束縛するという傾向が問題」→多数者の暴虐
Tyranny of Majority
ミルの経済論
人口増加→食料価格上昇→労賃上昇→利潤低下→停止状態(stationary state)。
「停止状態」は、経済的進歩ではなく、人間的な進歩を目指す。
人口増加は、孤独(自己省察)を不可能にし、天然資源や環境の悪化を招く。
ミルの二分法
生産―自然法則(マルサスの人口法則、収穫逓減法則)
分配―人間が変更可能
人間に対する自然条件の基本的制約の強調。「競争」が人間を内向きなものから外向きへ向ける。労働の魅力化。
「停止状態」では、産児制限、技術改良などで余暇増大の可能性。
ミルのアイルランド問題。小作人に永久的な借地を与える土地制度改革案。相続制度の
改善案。長子相続制批判。
ジャマイカの反乱。総督エアの処遇。カーライル、ラスキンら擁護。ミルはエア批判の急先鋒
宇沢弘文「ジョン・スチュアート・ミルと木村健康先生」『宇沢弘文の経済学』所収
『自由論』の監訳者、木村健康 日本のリベラリズムの代表者のミル論
功利主義を超える「人格の陶冶」をみる。
河合栄治郎の弟子。
木村のエッセイから。→別に配布したミルのヘイトスピーチに関する論説と比較
「「愛国心とは、たとへ自分の国が現在悲惨と醜汚にみちてゐても、なほそれを愛する心である。現在不正義と貧窮がみちみちてゐる国を愛する途は何であろうか。それは自分の国から貧窮と不正義と醜汚とをとりのぞくべく努力することにほかならない。さうして自分の国を一歩でも正しく豊かに美しい国に向上せしめようと努力することにほかならないのである。愛国心は一言でいへば、自国の生活と文化とを築きあげやうとする不退転の意志である。盲目的熱狂的排外主義が愛国心の名にあたひしないのは、それがこのような積極的建設的意志と努力とを蔑ろにしてゐるからである。このやうに考えると、愛国心は一国の独立と幸福と、さらに世界平和の確立とを推進する根本的動力である。(略)愛国心は単なる激越なる感情ではなくて、それは毅い意志と、慧い叡知と、ふくよかに美しい情感との交響曲である」(「青年と愛国心」1953年)。