原田泰日銀審議委員の現状の雇用分析(栃木県金融経済懇談会における挨拶要旨)

 原田さんの現状の雇用分析をご紹介。

 全文は以下に
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/ko151111a.htm/

 特に賃金に関しての部分を以下に抜粋

雇用は伸びても賃金は上がらないと言われてきましたが、図表4に見るように、賃金に雇用者数を掛けた雇用者所得で見れば上昇しています。もちろん、実質で見れば雇用者所得も増加していませんでしたが、2014年4月からの消費税増税の影響を除けば実質でも増加していました。消費税増税の影響が剥落する2015年4月以降は、増加の傾向がより明らかになってきています。
(略)
賃金が上がらない理由として、通常使われる賃金データが、全労働者の月次の平均賃金であることがあります。企業は景気回復の初期には、非正規の労働者を雇って需要の増加に対応しようとします。需要が継続的に伸びるか確信が持てないからです。したがって、景気回復期には時給が低く、かつ、月の労働時間が短い労働者が増加します。すると、統計的には、全労働者の月の平均賃金が低下することになります。景気回復が続けば、企業は正規の労働者を雇うようになりますが、そうなるまで時間がかかります。
図表5は、一般労働者(フルタイム)とパートの労働者について、時間当たりの名目賃金を見たものです。一般労働者の賃金にはボーナスが含まれますので、季節調整をしても振れが大きく明確な傾向を見出すことが難しいですが、パートでは安定的に伸びています。景気回復が続くにつれて、両者の賃金とも継続的に増加し、賃金が増えていることが確認できるようになるでしょう。なお、「量的・質的金融緩和」開始の2013年4月から直近2015年9月までの賃金上昇率を見ると、一般労働者は1.2%、パート労働者は3.8%と、パート労働者の賃金の上昇が大きくなっています。

賃金動向をみると、「量的・質的金融緩和」開始の2013年4月から直近2015年9月までの賃金上昇率を見ると、一般労働者は1.2%、パート労働者は3.8%と、パート労働者の賃金の上昇が大きくなっています」とのことで、失業率の改善も含めると、アベノミクス以前に比べて働いている人たち(働こうという人たち含めて)の「経済格差」が縮小している可能性が大きい。もちろん高齢者や病気などで働く意思のない人との格差は別問題として議論する必要があるだろう。