経済政策の失敗と自殺者数推移、うつ病、人工中絶実施率との関係

 twitterに書いたことをほぼそのまま。
 自殺者数の推移もアベノミクス(第一の矢が主力)による経済の安定化とミクロ的な財政的対応で今年度はさらに減少。この数字でも二万人を超えてるが、それでも今年度は90年代前半の水準に戻る可能性が濃厚。つまり長期停滞以前に戻る。

 経済の安定化に失敗するとそれだけで多くの人命が失われてしまう。日本では自殺者数と景気循環の関係が長期停滞を背景にしてゼロ年代冒頭から議論されてきた。当初は我々の指摘に対しては言論界はきわめて冷淡だった。「自殺は景気ではなくもっと複雑な理由による」と。まるでカルト扱いだった。

 人が様々な理由で生死を選択しているのには異論はない。しかしそれを認めたうえでも、自殺と景気循環がきわめて密接な関係にあることを指摘することは矛盾しない。最近では、リーマンショック以降の各国の動向を踏まえて同様の分析を、スタックラー&バス『経済政策で人は死ぬか?』(草思社)が提示。

 スタックラー&バスのポイントは不況の発生よりもそのときに経済政策が失敗(緊縮政策の採用)をすることが国民を殺してしまうということだ。これは日本の長期停滞を日本銀行と政府(その中核の財務省増税主義)の経済政策の失敗とみているわれわれの見解と同じである。

 自殺者と失業率の関係の図を。拙編著『「30万人都市」が日本を救う!』でも飯田さんや麻木さんと議論したことだが、仕事を奪われることの金銭的ショックと同じかそれ以上に社会的地位の喪失を(女性より)男性しかも中高年がうけややすい。

 自殺者数と景気の関係はさすがに経済系ではネットレベルでも理解がすすんでいるが、他方で精神疾患患者数の推移や人工妊娠中絶率(特に若年層)と景気の関係に対する議論はすすんでいない。、

『日本型サラリーマンは復活する』(2002年、NHK出版)でも言及しているが、失業とうつ病は関係が深く、また失業率の上昇は他面で会社の人たちの時間当たりの労働強度を高める(より少ない人数で仕事)。ストレスとうつ病の関係。

人工妊娠中絶実施率については試論の段階だが、20歳未満、20〜24歳の年齢階層と景気の代理指標としての失業率がやはり(逆)相関しているの。景気がよくなると中絶実施率は上昇し、悪くなると低下する。子どもの貧困問題との関連も考えてみたい。

経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策

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日本型サラリーマンは復活する (NHKブックス)

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